部屋を借りる際、そのオーナーである大家さんが近くに住んでいて直接管理している“大家さん物件”というものがある。管理会社を通さないため賃料が相場より安く、また部屋に問題が生じた時にすぐ連絡できる、防犯上安心などといったメリットがある。
“大家さん物件”といえば、お笑いコンビ・カラテカの矢部太郎が手塚治虫文化賞短編賞を受賞した漫画『大家さんと僕』で知った人もいるかもしれない。同作品は「僕」と「大家さん」のほのぼのとしたコミュニケーションが描かれ、シリーズ累計135万部を売り上げるベストセラーとなった。しかし、現実は大家さんとの相性が生活に大きく影響し、“ほのぼの”した毎日が待っているとは限らないようだ。
部屋に不備があっても高齢大家さんが対応してくれない
IT企業に勤めるエンジニアのIさん(30代男性)は生活スペースと寝室を分けたいという希望があり2DKの部屋を探していたところ、杉並区に、風呂トイレ別で家賃相場12万円ほどのところ、9.5万円という破格の物件を見つけた。築30年の木造建築で、2階に大家さんが住んでいる小さなアパートだ。大家さん物件は初めてだったが、願ってもない安さにすぐに契約した。
「大家さんは、70歳の一人暮らし女性です。入居するとき『部屋は業者を入れて掃除をしました』と言っていたものの、キッチン下の戸棚は油だらけ、戸棚に中には虫の死骸。前の入居者が使っていた2口コンロは放置されたままです。床はワックスがかけられた程度で網戸はカビが生え、ブレーカーボックスのような目の届かない場所は埃の山。業者が掃除をしたと言っていますが、本当なのか疑いたくなりました。
大家さんにこの状況を訴えると、『私は知らない』の一点張り。納得はいきませんでしたが、高齢の女性にそれ以上を詰めていくのは気が引けてしまい、黙って受け入れるしかありませんでした……。ちなみに窓のたてつけも悪く、エアコンの風が逃げてしまって夏は暑いし冬は極寒になりますが、何を言っても直してくれません。結局、『安いから我慢』という結論になりますが、うちの大家さんは居住スペースを貸してお金を貰う、というビジネスについての自覚が薄い気がします。ほのぼのしたコミュニケーションに憧れましたが、一切ありません(笑)」(Iさん)