働き方・雇用形態の多様化が進む一方、人材流出によって会社が不利益を被るケースもあるだろう。それでは、“企業側が退社する人に対して何らかの罰則を与える”ということは可能なのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
中間管理職です。期待していた若手社員が地方への転勤を嫌い、退職することに。彼の転勤のために準備していた仕事はご破算となり、結局は会社としても損失を被りました。いくら職業選択の自由があるとはいえ、彼のように軽く会社を辞めていく社員に対し、何かしらの罰則を与えるのは無理でしょうか。
【回答】
会社は労働者を、いつまでも拘束できません。
憲法第18条では「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」と定めています。民法627条1項でも「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」とあります。
一般の正社員は、期限の定めのない雇用契約ですから、この規定が適用されます。解約の申し入れは、労働者がする場合には退職であり、よって民法が適用され、雇用期間の定めがない場合は、2週間経てば無条件で退職できます。