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「若手社員が転勤を嫌い退職。準備が無駄に…」辞めていく社員に賠償・罰金を求めることは可能なのか? 弁護士が回答

 一方、有期契約では契約期間中は退職できません。使用者は契約期間中の労働が継続されることを前提に労務政策を立てているので、やむを得ません。その代わり、原則として3年超の有期契約はできません。もっとも、有期契約の期間中であっても、労働者はやむを得ない事情があれば、またはそれがなくても使用者の損害を賠償すれば、即時退職できます。

 そこで新入社員がなりふり構わぬ強固な退職意思を表明すれば、使用者の意向に拘らず、2週間経過後に雇用関係は終了します。しかし、普通の退職申出は、雇用契約の解除の申し込みで、使用者が承諾して合意による解除になると解されます。その間に、思いとどまるよう説得を試みてください。

 会社の期待も大きく様々な準備をしていたでしょうが、ムダになった分を賠償させたいと思っても、または罰金を徴収したくても、認められません。仮に入社時に、退職に際して教育コストを返すと約束していても、労働者の退職の自由を奪う一種の違約罰であり、『労働基準法』に違反するため、無効です。新しい人材は、採用時に時間をかけて選ぶしかありません。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2024年8月30日・9月6日号

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