それでも、渡辺さんは、球児たちのそのひたむきな情熱に心を掴まれた。
「部活動である高校野球がNHKで放送されて多くの人に応援されるのは、球児たちがただただ一生懸命に頑張るからです。
私も、人生をかけてプレーする選手らと一緒に生活をして刺激を受け、自分も胸を張れる寮母になろうと思って管理栄養士の資格を取りました」
たとえ甲子園に出場できなくても球児の努力と母の献身は色あせない。3人の息子全員が高校球児だった生活を著書『汗と涙と茶色弁当』に記した石川典子さんは、コロナ禍で大会が中止になる事態を経験している。
「野球をしていた夫の影響で長男が小3から野球を始めました。土日はいつもグラウンドにいて、弟たちも兄の背中を見て、小1で少年野球チームに入って全員甲子園を目指すことになりました。母親として食べることだけ支えてあげれば何とかなると思い、栄養補給や疲労回復を助ける食事や弁当作りは手をかけました」(石川さん・以下同)
長男と次男は予選ベスト4で敗れ、高3で最後の年にかけた三男はコロナ禍で大会が中止に。兄弟の夢は叶わなかったが、子供たちの試合を応援した熱い気持ちをいまも母は忘れていない。
「もう本当にチーム全員が息子のようで、みんな頑張って、けがしないでと、祈りながら応援していました。チーム全員がかわいい息子たちでした」
(第2回に続く)
※女性セブン2024年9月5日号