金銭面の負担もさらに重くのしかかる。甲子園球児を息子に持つAさん(46才)は「保護者との交際費がバカになりません」と振り返る。
「毎月のようにある定期保護者会に加えて2~3か月に1度の親睦会、半年に1度の研修会に忘年会、各種打ち上げなど盛りだくさん。ユニフォームや交通費など野球にかかるお金は年60万~70万円でしたが、集まりの会費や監督、コーチへの誕生日プレゼントなどが野球の費用と同じくらいかかる。合わせて年間120万~130万円ほどの支出になりました」
掟と暗黙の力関係が幅を利かし、野球以外のコストもかさむ高校野球の裏面。早見さんも内情をこう明かす。
「中学の出身リーグ別に親がグループを形成し、派閥の主導権争いをすることは珍しいことではありません。リーグの上層部は親にとって神のような存在で、上層部が姿を見せると父母が総出で接待し、事情を知らない若い母親が粗相をして総がかりで詰められることもある。名門校で世間では人柄もいいと評判の監督が実は守銭奴、という悲話もありました」
上を目指すチームほど、保護者の結束が必要になってさまざまなルールが生まれるのは必然かもしれない。だが、伝統や掟に違和感を持つ母親は少なくないと早見さんは続ける。
「男性は野球部の謎の風習や文化をすぐ受け入れる側面があるので、深く考えることなく折り合いをつけますが、女性はルールに従いながらも内心で“これ、おかしくない?”と疑問を持つケースが多い。
野球部はやはり男のコミュニティーですから、父親の意見が強く、その様子を半歩引いて見ているお母さんは少なくありません。そうした違和感を覚えながらも、誰が敵で誰が味方かわからないコミュニティーのなかで、自分の思いをうかつに表明できないのが現実です。取材でたくさんの母親たちが内情を話してくれたのは、ぼくが野球経験者でありながら完全な部外者だったからかもしれません」
※女性セブン2024年9月5日号