企業の事情 コスト削減の一環であるケースも
そうした中で株主優待制度を続ければ、圧倒的な存在感を持つ国外の投資家に「投資先として不適当」と烙印を押されるリスクがある。そうした懸念が、株主優待の廃止・縮小を後押しする流れに繋がっているのだという。さらに、企業側のこんな事情もある。
「株主優待を提供するには、当然、相応のコストがかかります。商品であれば、品物の管理や発送コストもばかにならない。収益性の低下など経営状況が厳しい企業が、コスト削減の一環として株主優待を廃止するケースもあります」(岡山氏)
もちろん、株主優待の廃止が企業の経営・財務状況を示す物差しとはなり得ない。実際、優待の廃止後に年間配当金が引き上げられたケースも少なくない。だが、優待廃止がネガティブ要素の一因と捉えられることもあるだろう。2023年の大和総研の分析によると「優待廃止公表直後に、株価が5~6%下押しする」ことも分かっている。
上場企業にとっては「痛し痒し」の状況と言えそうだが、個人投資家、とくに株主優待を楽しみにしてきた人は、こうした流れに注目すべきだろう。前出・岡山氏が指摘する。
「株式優待が魅力的な企業は、長期保有目的の個人投資家が増えるため、総じて短絡的な売買に伴う株価の乱高下が少ない傾向があります。これは、とくに食品や日用品を優待にしている場合で顕著です」
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