森口亮「まるわかり市況分析」

米国市場に正反対の2つのアノマリー「利下げ後に株価下落」「大統領選後に株価上昇」…両者をどう読み解くか、ポイントを解説

ジャクソンホール会議に出席したFRBのパウエル議長(=左。写真:時事通信フォト)

ジャクソンホール会議に出席したFRBのパウエル議長(=左。写真:時事通信フォト)

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が利下げについて言及し、年内の利下げの見方が強まっている。利下げ後にマーケットはどのように動くか。また、11月には大統領選も控えており、株式市場に及ぼす影響も大きいと見られる。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんによる、シリーズ「まるわかり市況分析」。森口さんが米国市場のアノマリーについて解説する。

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 8月23日、経済シンポジウムであるジャクソンホール会議にて、FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長が利下げについて明言しました。これにより、米国では利下げが開始されることが明確となりました。市場では年内に1%程度の利下げが予想されており、それを受けて株価が上昇する動きが見られています。しかし一方で、市場の注目度も高い大統領選挙の投票日も着実に近づいています。今回は、これら利下げ、大統領選と米国市場についての2つのアノマリーから今年の市場動向を探ってみたいと思います。

実は利下げ時に株価が下がることが多い

 株式市場の教科書的な見方では、「利上げ→金利負担の増加→株価下落」とされ、反対に利下げは株価上昇の要因と考えられがちです。しかし、実際の株価はその通りには動かないことをご存じでしょうか?

 2022年に第一生命研究所が発表したレポートによると、過去の利上げ局面では、利上げ開始から1~3ヶ月間は株価が調整局面を迎えますが、その後は上昇に転じることが多いことが示されています。

 FRBが金利誘導目標の公表を開始した1971年以降の9回の利上げ局面を振り返ると、そのうち6回で株価が上昇しており、平均騰落率は6.66%となっています。利上げ期間中も株価パフォーマンスは総じて堅調であり、「利上げ=株安」という通説が必ずしも当てはまらないことがわかります。特に、インフレ圧力が抑えられ、利上げ幅が小さかった近年のデータにはより顕著にこの傾向が見られます。

 一方、利下げの際には、景気後退が訪れるケースが多いことが分かっています。同期間中に少なくとも8回の景気後退が発生しており、そのうち4回はリーマン・ショックやコロナ・ショックなどのショック安が含まれています。

 これらのデータから、これから利下げを迎える米株市場においては、景気後退期に入った場合、特に大きな下落が発生する可能性があることを認識しておく必要があります。

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