本州と九州を隔てる関門海峡を臨む和布刈神社(めかりじんじゃ、福岡県北九州市門司区)。年に一度、ワカメを刈る神事で、地元で知らない者はいない神社だ。同神社が始めた「海洋散骨のフランチャイズ事業」が注目を集めている。三十二代目神主の高瀨和信氏に話を聞いた。
「和布刈神社は、十数年前まで年末年始しか稼働してないような状態で、当時の神社としての売上は年間500万円ほどでした」
高瀨氏の言葉を聞いて、地元出身の筆者は驚いた。和布刈神社といえば、北九州市では広く知られた神社である。毎年旧暦の元日に行なわれるワカメを刈る神事には、多くの観光客や氏子が集まる。
「この話をすると、驚かれる方も多いのですが、うちのような小さな神社では、初詣の稼ぎ、つまり年末と年始の収入がほとんどで、それを12等分して1年を過ごします。足りない部分は、副業でなんとか補うような状態になる。和布刈神社でも、祖父は蘭の栽培、父は古物商との兼業でした」(高瀨氏)
高瀨氏の説明では、全国に8万社以上あるとされる神社のうち、和布刈神社のように家族だけで運営する「民社」は2万社ほど。その多くが経営難に直面しているという。「そうした民社を中心に、近い将来3万社前後が消滅する可能性が指摘されている」(高瀨氏)といい、少し前までの和布刈神社もそのひとつだった。
ところが、現在の収入は年1億4000万円に迫るという。