YouTuberなどのマネジメント業務を手掛けるUUUMの創業者・鎌田和樹氏(40)が初の著書『名前のない仕事』の刊行を記念して、親交のある吉本興業前会長の大崎洋氏(71)と対談。30歳以上離れてもお互いに通ずるものがあるという二人が、「名前のない仕事」論を語り合った。
大崎:鎌田君の本、とても面白く読みましたよ。
鎌田:ありがとうございます。大崎さんは僕のLINEに「早速、5ページまで読んだけど、面白い」とメッセージをくれましたね。
大崎:ははは。鎌田君がYouTuberをマネジメントするUUUMを起業する前、光通信にいた時の軍隊式な社風の経験が最初に書かれているのを読んで、なかなかの衝撃を受けたんや。その後、YouTuberのHIKAKINさんに出会い、誰もやったことのなかった仕事をしていくプロセスも本当に良かった。
人間というのは何十時間も煮込んで味が出るコンソメみたいなもの、と僕は思うとる。やはりどんな環境においても、若い頃に「我を忘れて働く」という体験は、人間の味わいの芯の部分を作るんやね。
鎌田:19歳で光通信に入社した時、僕はパソコンの電源のつけ方すら分かりませんでした。そんななか、配属された総務部で必死に仕事を学んでいったことが、自分のルーツになっています。以来、仕事において実感してきたのは、「種をまき続けること」が何より大事だということですね。いつ回収できるかが分からなくても、とにかくいろんなことに挑戦して種をまく。それが10年後、20年後の自分のあり方につながっていくんだな、と。
だから、今でも会議室にいるよりも外に出て、ゴルフ場で人と会うことのほうがはるかに大切という思いがあります。大崎さんも若い頃にたくさんの種をまいたのではないですか?
大崎:僕が吉本興業に入った頃は、ちょうど世の中が漫才ブームやった。まァ、ブームだから2年半くらいで終わるんやけど、その時は睡眠時間もほとんどないくらいに働いたもんでした。無理を言う先輩も多くて、「なんでこんなことせなあかんのかな」と思う時もあったけれど、鎌田君と同じように、とにかくがむしゃらにやっていたよ。
で、そのあと出会ったのがダウンタウンの二人。なかなか評価されない彼らのマネージャーを勝手に名乗ってね。「2丁目劇場」というところに住み込み、チケットも一枚一枚、手売りをしたものやった。看板なんかも手書きで作ってね。
鎌田:それが大崎さんにとっての「名前のない仕事」だったんですね。