日経平均株価が7月の史上最高値から一転、8月5日に史上最大の暴落を記録するなど乱高下し、為替も円安から円高に反転して混乱が続くなか、投資先となる日本株の選別が進んでいる。そんななか、2024年期の連結決算において、最終損益で6227億円の黒字を発表した絶好調企業・日立製作所が、投資家たちの間で注目されている。
〈「日立買い・トヨタ売り」のワケ 円高警戒、外需株選別〉
8月17日、日経新聞朝刊でそう題された記事が掲載された。両社ともに海外比率の高い外需株だが、海外企業のM&Aなどを進めた日立は為替変動による収益のぶれが少ないことが評価され、トヨタ株などから資金を引き揚げて「日立買い」に動く投資家が増えているのだという。
日立の株価は年初から約80%上昇。8月の大暴落を経てもすぐに暴落前の水準を取り戻した一方、トヨタは年初来で0.5%下落となっている。トヨタと対照的な日立の株高は当面続きそうだが、上昇が期待されるのは日立本体だけではない。カブ知恵代表の藤井英敏氏が語る。
「“親亀が潤えば子亀も潤う”の言葉通り、関連企業や取引先の銘柄も株価上昇の機運は高まるでしょう」
日立のグループ企業や有力パートナーのなかから今後のさらなる株価上昇が期待できる銘柄を、藤井氏とマーケットバンク代表の岡山憲史氏が厳選した。
欠かせないパートナーは「商社」
藤井氏が注目するのは、日立のビジネスの柱の一つ、デジタル領域の新規事業「ルマーダ」に関連するDX銘柄だ。
「日立と協業して金融機関向けなどに認証・セキュリティサービスを提供するサイバートラストは時価総額150億円前後と小さいため、株価の大幅な上昇が期待されています」
海外展開を推し進めるうえで欠かせないパートナーとなる「商社」を挙げるのは岡山氏。
「海外の鉄道やエネルギー関連プロジェクトを進める際には共同で進める大手総合商社の存在が不可欠です。アジアや中東などの日立のインフラプロジェクトは、伊藤忠商事とともに進めています」
ルマーダに加えて、ABBから買収した「送配電事業」はエネルギーの脱炭素化が進むなか大きな発展が予想される。
「日立は火力や原子力といった発電部門の多くを手放して『送配電事業』に集中させてきた。再生可能エネルギーは発電量とタイミングを人の手でコントロールできないため、それを計算して効率的に送電するシステム整備が重要になります。そのための電線やケーブル、電子部品などの有力取引先である電線メーカーにも需要が生まれるはずです」(岡山氏)
日立はグループ再編でいち早く「親子上場」解消を進めてきた。本体との相乗効果が高い子会社を「TOB(株式公開買い付け)」で完全子会社化するなどして評価されてきた。
「そうした観点から注目したいのが2022年に売却され、日立の連結対象外になった日立建機。まだ日立が25%の株を保有しており、業績も好調のため本体がTOBをして吸収するのではないかとの観測がくすぶっています。
実施すれば上乗せ価格で株の買い取りが進む可能性が高い。北米事業を強化する同社は9月に予想される米利下げが追い風になる可能性もあり、そこも有望です。こうした日立系企業はほかにもあります」(藤井氏)
※週刊ポスト2024年9月13日号