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【絶好調・日立製作所の研究】「よくここまで変われたなと思う」元社員が語る“縦割り”との決別 トップの先見の明と今後の課題

「3分野」で稼ぐ日立製作所の最新「事業構造」

「3分野」で稼ぐ日立製作所の最新「事業構造」

組織風土が一変“モノづくりからコトづくりに”

 ただ、その後はトップダウンの改革により、組織風土が一変したという。

「2009年3月に川村隆社長が就任して以降、“モノづくりからコトづくりに”と言われ続けた。その頃よく比較していたのが米GE(ゼネラル・エレクトリック)。『GEに比べると劣っているから頑張っていこう』と言われました。社会インフラやIT分野にシフトするため、それに向かない日立化成や日立金属といった系列会社は利益が出ていても独立させて、未来の事業に協力できるところは逆に買収した。

 スイスのABBの送配電部門を巨額買収した時は社内でも驚きの声があがっていました。これにより日立は世界一の送配電事業者になったわけですから、トップの先見の明だと思います」(同前)

 連結従業員数26万人(2024年3月末)という巨大企業グループであるがゆえの判断の遅さや他部署任せの風土も改革の対象となり、「社内では川村さんが最終的な意思決定の責任を持つ『ラストマンになる覚悟を持て』とよく言っていて、東原敏昭会長からは“一人称で考えろ”と繰り返し指導を受けた」(同前)という。

 10年越しの経営改革が奏功しつつある今、福富氏は「あえて挙げるなら」と前置きしたうえで今後の課題についてこう話す。

「1990年代までは社長が約10年変わらない“ブレない体制”が日立の特徴でした。それが、危機を経て再編が進んだこの10年ほどは、数年単位でトップが交代しています。

 今のところ社長が交代しても改革のスピードや意思は継続されているように見えますが、そうした経営トップの人材が今後も出てくるかどうかは死活的に重要です。トップダウンで改革を進めてきただけに、大企業病を“再発”させないための舵取りが求められます」

 大胆な転換でV字復活を果たした日立は、“変わり続ける”ことでさらなる未来を切り拓けるか。

※週刊ポスト2024年9月13日号

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