“難民”数を押し上げている「高齢者の住居形態」
中でも東京圏に集中しており、買い物難民の5人に1人以上にあたる203万7000人である。店舗が多く便利な東京圏において買い物難民が多いことは不思議に思えるが、東京圏に高齢者が集中しているためだ。高齢者の絶対数が多ければ、買い物難民となる人も多くなるということである。
社人研によれば、東京圏の2020年の高齢者数は927万3000人で全国の高齢者の25.7%を占めるが、2050年は1160万人を超え3割ほどとなる。2020年から2050年の間に増える高齢者の6割以上は東京圏での増加である。
今後の買い物難民は「東京圏の難題」になっていくことだろう。
高齢者の増加に加えて買い物難民の数を押し上げているのが、高齢者の住居形態である。
内閣府の「高齢社会対策総合調査」(2023年度)によれば、高齢者の76.2%が一戸建ての持ち家に住んでいる。現在の高齢者でマンションなどに住む人は少数派なのである。
一戸建ての持ち家の場合、駅前などの商店街から少し離れた住宅地エリアに建っていることが多い。丘陵地やニュータウンとして分譲された土地に建っているものもある。こうした物件の場合、近所に商店がないというところが少なくない。マイカーを所有しなくなると途端に“陸の孤島”のようになってしまうのだ。
これらの実情を踏まえた対策が求められる。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、最新の統計データに独自の分析を加えた未来図を示し、これからの日本が人口減少を逆手に取って「縮んで勝つ」ための方策を提言している。