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【日本の医師不足は本当か?】医学部の定員増が社会にとってマイナスとなる本末転倒

医学部の定員増がもたらすマイナス影響とは(イメージ)

医学部の定員増がもたらすマイナス影響とは(イメージ)

「医師不足」が言われるようになって久しい。厚生労働省の「無医地区等及び無歯科医地区等調査」によれば、近隣に医療機関が存在しない「無医地区」は2022年10月末時点で全国557地区にのぼっている。人口減少問題の第一人者で作家・ジャーナリストの河合雅司氏は、医師の総数が足りないわけではないのに医師が「不足」するのは、地域ごとに人口減少スピードの差があるためだと分析する。以下、河合氏の最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』より抜粋・再構成して紹介する。

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「実質的な無医地区」が拡大する中で、地方自治体の首長などは政府に対し医師不足解消を要望している。だが、実際には「不足」ではなく、数年後に「医師余り」へと転じる可能性が高い。

 厚労省の推計によれば、医学部入学定員を2020年度の9330人で維持し、働き方改革を踏まえて「医師の労働時間を週60時間程度に制限」した場合、2023年に医学部に入学した人が医師になる2029年には需給バランスが均衡するというのだ。すなわち、翌2030年以降は「患者不足」に陥るということである。

 人口減少が進むというのに、地方の要望に圧されて過剰な医師養成を続けてきたのだから余剰になるのは当然だ。偏在解消を進めればよいものを、政治家たちは医療の充実は有権者へのアピール材料になるとあって、説明がしやすい医学部の定員増を積極的に推進してきたのである。

 文部科学省によれば、医学部の入学定員は1982年および1997年の閣議決定で抑制され、2007年度は7625人だった。しかしながら臨時の定員増によって2009年度は8486人に引き上げられ、2010年度以降は「地域の医師確保等の観点」という名目で最大9420人にまで拡大された。直近の2024年度は9403人だ。

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