田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の全固体電池開発が世界をリード、実用段階へ 日本の自動車産業にとって大きな脅威に

日米韓を圧倒する母国の市場規模

 米国ではSolid Power、韓国ではサムスン電子、日本では大手自動車メーカーを中心に開発が進んでいる。現時点では、まだ、決定的な差は付いておらず、日米韓などにも覇権を握るチャンスがありそうだが、中国は手ごわい。

 とにかく、母国の市場規模が巨大だ。2023年における中国の自動車販売台数は3000万台を超えており、米国の1.9倍、日本の6.3倍に達している(OICAより)。生産台数では米国の2.8倍、日本の3.4倍だ。中国における2024年上半期の自動車生産台数は1389万台だが、この内、新エネルギー自動車は494万4000台に達しており、既に全体の35.5%を占めている(中国自動車工業協会)。

 なぜ中国の新エネルギー自動車産業がここまで急成長できたのかを考えると、もちろん中国の起業家たちの強烈なアニマルスピリットもあるが、国家が果たした役割も大きい。

 国家が金融機関を巻き込んで、戦略的新興産業に資金を集中的に注入し、研究面では研究機関がいろいろな形で支援しているのだが、これらの戦略は特定の企業を育てるというよりも、業界全体で生産量を増やし、企業間に激しい競争を起こさせることが暗に意図されている。

 結果的に生産過剰となり、淘汰される企業が多数出るが、その一方で熾烈な生き残り競争を通じてイノベーションが励起され、コストダウンが劇的に進む。供給側にとっては残酷なまでの自由競争である。結局、国家は生産者を支援しているように見えて、実際には消費者の側に立っている。中国の発展の背景を考えると、日米欧企業が競争に打ち勝つのは容易ではなさそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。