ものの貸し借りはトラブルの種だが、それが“農地”の場合、少々事情が複雑になる。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
義父は生前、知人に畑を貸しており、その人がさらに友人に畑を貸して共同で利用しているようです。義父が亡くなった後、畑を返してくれるように話したのですが返してくれません。税金は主人が払っているので、今後どのように対処したらよいか教えてください。(60才・女性)
【回答】
農地の貸借には農業委員会の許可が必要で、ご質問の畑の貸借が、
【1】賃料を支払う賃貸借
【2】支払いがない使用貸借
【3】無許可の貸借
これらのどれか不明です。そして、ご質問の対処とは返還を求めるのか、賃料(小作料)の増額かもわかりませんので、場合分けして考えます。まず、畑の返還を求める場合から検討します。
【1】では、契約の終了には農業委員会の許可が必要です。
【2】では、民法の原則から、期間の定めがあればその満了時、なければ耕作した作物の収穫の終了時に終了させられます。
【3】の貸借は無効ですから返還請求は可能ですが、長期にわたる有償の小作で、賃借権の時効取得や権利濫用などの反論を受けた場合、【1】の農業委員会の許可を得ることができる場合と同等の状況にないと、返還実現は困難かもしれません。
そして、【1】で農業委員会が返還を許可する理由としては、
【A】賃借人に信義に反した行為がある
【B】地主に農地より相当な具体的な利用目的がある
【C】その他正当な理由がある
などです。
畑の又貸しは【A】ともいえますが、お義父さんが承諾しているかもしれませんし、共同耕作しているので信義に反するとまではいえない可能性が大です。また、具体的な利用計画がなければ【B】に当たりません。