時価総額5兆円を超えるセブン&アイHDが、カナダのコンビニ大手から買収提案を受けたというニュースは、多くの人に衝撃を与えた。円安などを背景に日本企業は、海外勢からかつてないほどに割安だと見られている。
海外企業のM&Aの判断に際しても用いられるのが、「EV/EBITDA倍率」という指標である。これは「EV(※企業価値。一般的に「時価総額+有利子負債-現預金」で算出)」が、「EBITDA(※収益力。一般的に「営業利益+減価償却費+のれん償却費」で算出)」の何倍あるかを示すもので、M&Aの世界では「買収に使った資金を何年で回収できるか」の目安として使われる。買収に必要な金額(企業価値)が1兆円でその企業が1年に1000億円を稼ぐなら、「EV/EBITDA」は10倍で買収資金は10年で回収できる計算になるわけだ。
企業分析情報を提供するバフェット・コードの協力のもと、ここでは小売業界の「EV/EBITDA倍率」を比較し、ランキング化した。次に海外から狙われる企業は──。
ファーストリテイリングは米国の同業界平均より高水準
セブン&アイを含む小売業界。市場分類における小売業は幅広く、コンビニやスーパーだけでなく、アパレルや家電量販店などを含む。同業界の大手を見渡すと、「EV/EBITDA倍率」は、ヤマダHDがセブン&アイよりわずかに低い7.7倍。米中の同業平均はもちろん、日本の平均(12倍)も下回る。
経済ジャーナリストの有森隆氏が言う。
「住宅事業などに課題があるため市場での評価は他の小売より低くなっているが、今後成長が見込まれるインドネシアをはじめ、東南アジアへの海外展開を積極的に進めている。将来的な収益への期待は大きい」