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「稼ぐ力はあっても市場の評価が上がらない」米中よりも“割安”な日本の自動車業界 収益力に比して企業価値が最も低いのはマツダ

日本の自動車業界の評価が収益力に比して低いのはなぜか

日本の自動車業界の評価が収益力に比して低いのはなぜか

 昨年の3月、欧州連合(EU)は、2035年にエンジン車の新車販売をすべて禁止するとしてきた方針を変更し、環境に良い合成燃料を使うエンジン車は認めると発表した。ボルボは2030年までに全新車のEV化を撤回、フォルクスワーゲンは独国内の工場閉鎖を検討するなど、自動車業界は先行き不透明な状況が続く。

 日本では、ホンダと日産自動車がEV分野で連携をするなど、企業間での提携の動きも著しい。日本の自動車産業が、海外企業から買収やM&Aを仕掛けられる可能性はあるのだろうか。

 海外企業のM&Aの判断に際しても用いられるのが、「EV/EBITDA倍率」という指標である。これは「EV(※企業価値。一般的に「時価総額+有利子負債-現預金」で算出)」が、「EBITDA(※収益力。一般的に「営業利益+減価償却費+のれん償却費」で算出)」の何倍あるかを示すもので、M&Aの世界では「買収に使った資金を何年で回収できるか」の目安として使われる。買収に必要な金額(企業価値)が1兆円でその企業が1年に1000億円を稼ぐなら、「EV/EBITDA」は10倍で買収資金は10年で回収できる計算になるわけだ。

 企業分析情報を提供するバフェット・コードの協力のもと、ここでは自動車業界の「EV/EBITDA倍率」を比較し、ランキング化した。次に海外から狙われる企業は──。

米テスラの54.9倍に遠く及ばない

 販売台数などでは世界トップを走るが、「EV/EBITDA倍率」の業界平均では日本の9.2倍に対し、中国が11.7倍、米国は19倍という開きがある。個別で見てもトヨタの9.6倍は、米テスラの54.9倍に遠く及ばない。百年コンサルティング代表で経済評論家の鈴木貴博氏が語る。

「電気自動車一辺倒の米中勢に対し、日本はトヨタ中心にハイブリッド車や燃料電池車など多面展開している。それゆえ現状の稼ぐ力はありますが、それでも数値が米国より軒並み低いのは、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)というソフトウェアで運転性能を向上させる技術で出遅れていて市場の評価が上がらないことが大きいのでは。技術力による巻き返しの可能性があるとはいえ、課題が残ります」

 一方、ランキングではマツダの数値が最も低かったものの、「マツダはトヨタが大株主であり、そう簡単に他社からの買収提案が通るとは考えにくい」(前出・鈴木氏)といった事情もありそうだ。

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