新薬の開発競争などでしのぎを削る医薬品業界。2019年に大正製薬によるUPSA SASの子会社化、2022年にエーザイによるArteryexの子会社化など、大型の買収やM&Aの動きも激しい。
日本の大手医薬品会社の買収やM&Aの可能性はあるのだろうか。
海外企業のM&Aの判断に際しても用いられるのが、「EV/EBITDA倍率」という指標である。これは「EV(※企業価値。一般的に「時価総額+有利子負債-現預金」で算出)」が、「EBITDA(※収益力。一般的に「営業利益+減価償却費+のれん償却費」で算出)」の何倍あるかを示すもので、M&Aの世界では「買収に使った資金を何年で回収できるか」の目安として使われる。買収に必要な金額(企業価値)が1兆円でその企業が1年に1000億円を稼ぐなら、「EV/EBITDA」は10倍で買収資金は10年で回収できる計算になるわけだ。
企業分析情報を提供するバフェット・コードの協力のもと、ここでは医薬品業界の「EV/EBITDA倍率」を比較し、ランキング化した。次に海外から狙われる企業は──。
米国の平均と引けを取らない武田薬品・エーザイ
新薬の開発競争などでしのぎを削る医薬品業界の「EV/EBITDA倍率」は米国の平均18倍と比較しても、16.4倍の武田薬品工業や16.9倍のエーザイは引けをとらない。大学特別招聘教授の真壁昭夫が分析する。
「武田薬品は大手製薬メジャーの一角に入り込もうとアイルランドのシャイアーを買収した一方、アリナミンなどの大衆薬事業を売却するなど成長戦略の効果が出て市場の評価が高い。エーザイも認知症治療薬のレカネマブが米国で承認されるなど成果が出ています。対照的に大塚HDは、認知症関連薬の開発中止で減損損失を計上するなどしたため、現在は他社よりも評価が低迷しているのではないか」