首都圏や近畿圏では、家賃が上昇傾向にある。入居から長い期間が経つ賃貸物件では、当時よりも家賃相場が上がった結果、周辺の近い条件の物件よりも結果的に安く住めているというケースもあるだろう。しかし、長く住んでいるからこその苦悩というものもあるようだ。
都内に住む会社員のAさん(30代女性)は、現在のマンションに住み始めてから今年で7年目。つい最近3回目の更新があった際、大家から1万5000円の家賃値上げをお願いされたという。
「物価の高騰に伴い維持費が上昇したというのが、大家さんが説明した家賃値上げの理由でした。事情は分かるんですが、こっちとしては素直に受けとめられないですよね。引っ越しも考えて近くの物件を調べたんですけど、正直なところいま住んでいる物件と同じくらいの条件だと、結局家賃が高くなってしまう。それが相場ということでしょうけど、すでに築25年の家はだんだん古くなっていて、水回りも怪しい。それなのに家賃が上がるのが、感情的に納得いかないというか……」(Aさん)
Aさんには家賃以外にも「なかなか引っ越しにくい」事情がある。
「いま住んでいるマンションでは、壁一面に本棚を設置しているんです。それが結構大がかりで、もし引っ越すなら、その本棚が置けるくらいの壁の面積は必要だし、仮に本棚が置けなかったとしたら、何らかの形で大量の本を収納するスペースが必要。本棚も処分するのが面倒です……。自分としては、いまの物件にもっと長く住むつもりだったので、本棚も設置したのですが、引っ越しにあたってはそれがネックになっているんです」(Aさん)
Aさんは大家と交渉して、家賃の値上げ幅を1万円にまで下げてもらうことに成功し、賃貸契約を更新した。
「まあ、当初から1万円の予定で1万5000円とか言ってきたんじゃないですかね。結局借りるほうは立場が弱いことを痛感しました。今まで賃貸派でしたが、さすがに家の購入を考えたほどです。次の更新までには引っ越したいと考えていて、いまからちょくちょく物件をチェックしています」(Aさん)