近年、金融庁や証券取引所は、日本企業が海外投資家からの評価向上を目指し、「社外取締役」や「女性役員」の増員を求めている。企業内での多様性の確保が重要視される中、「元女性アナウンサー・キャスター」の経歴を持つ社外取締役が次々と誕生している。一流企業が彼女たちを選んだ背景には、どのような理由があるのだろうか──。【前後編の後編。前編から読む】
入念な番組準備を評価
ホテル事業などを手がけるリゾートトラストの社外取締役の野中ともよ氏は元三洋電機会長の経歴も有名かもしれない。経済ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。
「2002年から取締役を務めていた三洋電機で2005年に代表取締役会長に就任。同社の経営改革に着手しました。
しかし、2007年に会計士の夫が経営するコンサルタント会社への高額報酬支払いなどが公私混同と問題視され、辞任しています。その後、環境問題に取り組むNPO立ち上げなどを経て、2017年に社外取としてリゾートトラストに招かれています」
TBS出身のフリーアナ竹内香苗氏は、2020年、“前任”の元NHKアナの久保純子氏と交代する形でSBIホールディングス(HD)の社外取締役に就任。久保氏も竹内氏もSBI創業者の北尾吉孝社長がナビゲーター役を務める『この国の行く末2』(BSフジ)で番組アシスタントを務めていたことが縁になったようだ。
「同番組では2年間にわたり約50名のリーダーを取り上げており、竹内様は毎回入念に事前準備をされた上で収録に臨まれ、進行アシスタントであるとともに視聴者に寄り添うコメント等でも番組制作に携わっていただいたというご縁があります」(SBIHDコーポレート・コミュニケーション部)
不動産大手・オープンハウスグループの社外取締役を務める小谷真生子氏にはこんな逸話がある。
「小谷アナがキャスターを務めたテレビ東京『ワールドビジネスサテライト』は、社長・会長と財界のアイドル的存在の小谷を対談させるという、スポンサーへのご褒美みたいな側面がありました。経営者に『小谷がいないと番組に出ない』と言わせるほど、とにかく経営者ウケの良いアナウンサーでした」(番組関係者)