“前期高齢者”はすでに減少…今後増え続けるのは「75歳以上」
他方、高齢者就業が頭打ちとなった要因は別にもある。コロナ禍の影響以上に大きいのは「高齢者の高齢化」である。
9月15日現在の高齢者人口3625 万人のうち75歳以上は2076万人を数え、高齢者全体の57.3%を占めている。団塊世代が2024年中にすべて75歳以上になるためだが、前年比71万人の増加である。
これに反比例して、65~69歳は前年より7万人少ない727万人だった。70~74歳も822万人で62万人減った。高齢就業者の中心をなすこれらの年齢層が減少を始めていることが、頭打ちの根本的原因なのである。
この傾向は今後も続きそうだ。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計によれば、2043年まで高齢者は増え続けるが、それは75歳以上人口が増え続けて数字を押し上げるためである。ちなみに、65~74歳人口は団塊世代がこの年齢層に達したことで激増し、2016年に 1767万人でピークを迎えた。
社人研によれば、すでに減り始めている65~74歳人口は、今後一時的に増加する時期もあるが、徐々に減っていく。2041年に1736万人に至った後は、長期減少に転じると見られている。
一方、75歳以上人口も増減しながら2055年に2479万人に達する。その後は減少傾向が続くとの見通しだ。
少子高齢化に伴う構造的な人手不足に直面する多くの企業には高齢者の採用意欲が高まっているところが少なくないが、これらの予測をみるかぎり現実的な人手不足対策とはなりそうにない。
(後編に続く)
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。