「日本の65歳以上人口の割合は世界最高」「65歳以上の就業者数は20年連続で増加し過去最多に」──「敬老の日」に流れたニュースを受けて、今後ますます高齢の労働者が増え続けていくという印象を抱いた人は少なくないだろう。だが、これから起きるのは、高齢者もまた減っていく人口減少社会の本格化だ。人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリスト・河合雅司氏が解説する【前後編の前編。後編を読む】
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総務省が「敬老の日」に合わせて発表した「統計からみた我が国の高齢者」によれば、2024年9月15日現在の高齢者人口(65歳以上人口)は3625万人となり、過去最多を更新した。総人口に占める割合も29.3%と過去最高を記録した。
これに伴い、高齢者の就業者数は20年連続で増加。過去最多の914万人となった。就業者総数に占める65歳以上の割合は13.5%だ。
ここでいう就業者とは、「月末1週間に収入を伴う仕事を1時間以上した者、又は月末1週間に仕事を休んでいた者」を指すのだが、こうした点を勘案せず単純計算すれば、就業している人の7.4人に1人が高齢者ということになる。
内閣府の高齢社会白書によれば、収入のある仕事をしている60歳以上のうち、36.7%は「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答している。「70歳くらいまで」より長く働きたいとした人は87.0%にも及んでおり、超高齢社会にある日本において高齢者の就業意欲は相当高いことが分かる。
だが、データを詳細に分析すると、「過去最多の就業者数」という言葉が放つイメージとはかなり違う実態が浮かび上がってくる。実は、高齢就業者数は頭打ちであり、就業率は実質的にはマイナスと言ってよい状況にあるのだ。