秋が深まるこれからの季節、台風シーズンの本格化で豪雨のリスクが増すことが予想される。そうした状況で懸念されるのが、昨今のゲリラ豪雨によって浮き彫りになった災害時における「地下」の危険性だ。
実際にそうなると地下では何が起こるのか。東京を例にし、シミュレーションしてみよう。
そもそも東京は傾斜や地盤沈下の影響で地面が低く、「下町」と呼ばれる東側の低地を中心に地形的な脆弱性を抱え、江東区や墨田区、江戸川区、葛飾区、足立区には海抜ゼロメートル地帯がある。多くの識者が想定するのは、下町エリアを流れる荒川の氾濫だ。
東京都交通局は、荒川右岸21kmが破堤するシミュレーションを2023年に公表した。それによると、地上の浸水域は大手町、丸の内、有楽町といった都心部に達する一方、地下に流入した水は地下鉄ネットワークを通じて地上の浸水範囲よりも広範囲に広がり、都営地下鉄のトンネル内浸水延長は約43kmに及ぶ。さらに、豪雨の危険が迫るのは、駅構内にとどまらない。
「丸の内や有楽町、大手町など、駅に直結した地下街も危ない」
そう語るのは元都庁の土木専門家で、公益財団法人リバーフロント研究所審議役の土屋信行さんだ。
「それらのオフィス街では地下鉄とその出入り口が一体化し、食堂街や物販店などあらゆる地下施設がワンステージでつながっています。豪雨が発生したら共通の出入り口から水がどんどん入り込み、地下施設全体が水没する恐れがあります」(土屋さん)
特に都心の広大な地下街は管理面に不安があると防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実さんが続ける。
「新宿や東京、大手町、有楽町などは多くの路線が乗り入れ、広大な地下街が広がります。そうした複雑に入り組んだエリアは浸水リスクに加えて、管理区分が複雑に分かれていて非常時の対応が難しい。災害時の協力協定は結んでいるものの、管理区分のうち1か所でも対応を誤ればそこから被害が拡大してしまう」