ひざ関節の軟骨がすり減り、歩くだけでひざが痛む「変形性膝関節症」は、自覚症状を持つ患者が1000万人、潜在的な患者数は3000万人といわれる国民病だ。中高年世代に多い病で、薬や運動による保存療法が第一の選択肢となるが、それでも痛みが改善されない場合は手術療法となる。そのうちの一つに「関節鏡視下手術」があるが、久我山整形外科ペインクリニック院長の佐々木政幸医師は次のように指摘する。
「運動療法や薬、注射によって痛みが引かない場合、関節の周辺から関節鏡というカメラを入れて、はがれた軟骨や炎症を起こしている滑膜という組織を切除する手術を行ないます。
この関節鏡視下手術後も痛みがおさまらなければ、人工関節手術が必要なケースも出てくる。それを避けるために複数回にわたって関節鏡視下手術を行なうケースが散見されますが、根本治療ではないため、効果を強く感じない場合は、複数回の手術を行なうべきではありません」
関節鏡視下手術は3割負担で5万~7万円。繰り返し受けても出費だけがかさむ結果になりかねないという。
(以下、図表で「見直しを検討したいひざ・腰の治療・検査」を紹介)
ひざ痛の改善を期待して「グルコサミン」「コンドロイチン」といったサプリを継続して摂取する人も多いだろう。しかし、ひざ痛の治療という観点からは、期待するような医学的効果は得られないという。
「グルコサミン、コンドロイチンはひざの軟骨を形成する成分ですが、いくらサプリで摂取しても、すり減った軟骨が再生されることはありません。あくまで健康食品として摂取する分には問題ありませんが、軟骨の再生に効果はないことを知っておきたい」(同前)
撮るほど病院の利益に
いわゆる「ぎっくり腰」である急性腰痛を発症し、整形外科を受診したらレントゲン(X線検査)を受けることがあるが、佐々木医師はこう注意を促す。
「正面と横と斜め、前屈と後屈などと、レントゲンを何枚も撮るケースがありますが、よほど重症でない限り、正面と側面だけ撮れば十分です。レントゲンを複数枚撮るのは保険点数が高く、何枚も撮影したほうが病院の利益になる側面があるからです」
レントゲン費用は部位にもよるが、腰だと通常2枚で900円前後。枚数が重なれば数千円の負担になる。
「無駄な出費にならないよう、撮影部位について主治医に説明を求めることが大切です」(同前)
ひざ痛や腰痛は骨密度の低下が原因となることもあるが、「骨の検査」でも注意が必要だ。
「骨粗しょう症になると、半年から1年に一度、『DEXA(デキサ)法』と呼ばれる骨密度検査を定期的に行なう必要があります。しかし、骨密度は一気に下がることはないので、骨粗しょう症のリスクが低いと判定された人は頻繁に受ける必要はありません」(同前)
闇雲に治療を受け続けるのではなく、必要な手術や薬、検査を正しく理解し、必要なものを選択することが重要だ。
※週刊ポスト2024年10月11日号