ところが、文科省は英語もITも学習指導要領に従った古い教育を学校に押し付け、あろうことか小学生から英語やプログラミングを必修化した。だが、そんなことをしたら、もっと早く子供のうちから英語・IT嫌いを増やすだけである。
英語は、ネイティブの先生と会話したり、外国人観光客を案内したりといった実践的なトレーニングをしなければ上達しない。ITも、ゲーム会社の社員などを学校に招いて面白いゲームの作り方などを実践的に教えてもらわなければ、子供たちは興味を持たない。
逆に言えば、日本は英語ができない教師やITに詳しくない教師が教えるから、学習指導要領という“答え”が必要になるのだ。
いま文科省がやっていることは、子供たちの未来を奪う教育にほかならない。この問題については本連載で何度も批判してきたが、これ以上、日本が没落しないためには、今すぐ文科省教育の抜本的な改革が必要不可欠なのである。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。
※週刊ポスト2024年10月11日号