候補先は何度も下見し自治体の窓口に相談を
移住希望地の自治体の受け入れ態勢も事前に調べておくといいという。50代の移住希望地ランキングでは静岡県が1位だったが、これは県庁所在地である静岡市が移住者の受け入れに力を入れているから。
「静岡市は政令都市の中で最も人口が少なく、人口減少が深刻化していました。そのため、約9年前から移住・定住事業に取り組んでいます。ミドル・シニア向けの就労相談専用窓口も設置しているため、50代の移住者もいらっしゃいます」(静岡市総合政策局企画課・増田早紀さん・以下同)
移住前に生活環境などを確かめてもらうため、“お試し移住体験”も行っているという。
「夏と冬など、季節を変えて実際に現地を訪れてみてください。移住を始める際も住宅を購入するより、まずは賃貸で暮らすのがおすすめです」
50代で移住を考えるなら、将来、体が動かしづらくなっても暮らせるかまで視野に入れて移住先を考えないといけない。交通の便や病院の有無など、個人で調べてもわからない場合は、支援センターや自治体の相談窓口を活用した方がいい。
「自宅で家庭菜園がしたいという理由で静岡市への移住を希望するかたもいますが、市内には庭付き一戸建ての物件が実は少ないんです。こういった、理想と現実の違いを伝えられるのも、相談窓口ならではのサービスだと思います」
移住を成功させるには、現地での生活について、明確なビジョンを持つことが必要。そのうえで、どんな情報や支援が必要かを調べ、時間をかけて準備することが大切だという。
【プロフィール】
高橋公(たかはし・ひろし)さん/認定NPO法人ふるさと回帰支援センター理事長。全日本自治団体労働組合書記、日本労働組合総連合会社会政策局長を経た経験から、団塊世代の定年後の地方回帰を見据え、同センターの設立運動に携わる。2002年のセンター設立時に事務局長を務め、2017年より現職。
※女性セブン2024年10月17日号