物件を探している不動産デベロッパーらを探す情報屋、土地の所有者に仕立て上げるキャスティング担当、各種証明書類を偽造するニンベン師、そして、犯罪チームを率いるリーダー……Netflixドラマ『地面師たち』は詐欺師グループによるなりすまし犯罪の手口を克明に描き出し、大きな話題となった。「事実は小説よりも奇なり」というが、『地面師たち』のベースになった「積水ハウス地面師詐欺事件」をも上回る巨額の資金を、「なりすまし」を使って外資系金融から詐取した男がいる。懲役15年の実刑判決を受け、14年の服役を経験した『リーマンの牢獄』(講談社)の著者・齋藤栄功氏に、フリーライターの池田道大氏が話を聞いた。【前後編の前編】
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Netflix制作のドラマで大ヒットとなった『地面師たち』。「地面師」とは、土地の所有者や関係者になりすまし、実際には所有していない土地の売却を持ちかけて、多額の現金を騙し取る詐欺師のことである。
ドラマでは、豊川悦司演じる地面師軍団のリーダー・ハリソン山中や、綾野剛演じる辣腕の地面師・辻本拓海らが、住宅メーカーや不動産開発会社らを相手に大掛かりでスリリングな詐欺を繰り広げる。
なかでも手に汗握るのが、地面師軍団と土地の購入者側が対面するシーンだ。小池栄子演じる「手配師」の麗子がキャスティングしたいわくつきの一般人が地主になりすまし、購入者側が生年月日や干支、自宅近くのスーパーの名前を尋ねて本人かどうか確認する。予想外の追及でなりすましがバレそうになると、地面師軍団の一員でピエール瀧演じる法律家・後藤が「もうええでしょう!」と割って入ってピンチを凌ぐ。この名ゼリフは話題を呼び、Netflix Japan公式Xではまとめ動画が公開されて人気を博した。
『地面師たち』は、2017年に発覚して被害総額が55億円に達した「積水ハウス地面師事件」をモデルにしている。大手住宅メーカーが詐欺師に騙されて数十億円の被害を受けていたことは、当時、大きな話題となった。
一方、地面師顔負けのなりすまし役を立て、米投資銀行リーマン・ブラザーズから371億円もの大金を騙し取った事件が実在することはあまり知られていない。