今回は、昼酒御免の伴走を買って出てくれた編集ケンちゃんとのふたり昼酒。生ビールのジョッキをガチンと合わせて、カンパーイ! と叫ぶ、のは心の中だけ。私たちはマナーに心をくだく昼酒愛好家である。というのも嘘で、生ビールをぐびりとやるや、
「くぁーっ! うめえ!」
「最高だねえ!」
と、けっこうデカい声を出している。なに、迷惑をかけるほどではないのだから、気楽に楽しく飲むに限る。店内を見れば、カップルの姿もあるし、若いきれいな娘さんたちの姿もあって、彩も華やかだ。上野も変わったよなあ、と感嘆の言葉をもらしたいくらいなのだ。
ここへ来たら、煮込みを頼もう。モツとコンニャクと豆腐が盛られたその上にシャキシャキの刻みネギ。このモツ、ネット検索して調べると、馬のモツと書いてある。その場で聞けばよかったが、私はこれまで、豚だとばかり思ってきた。本当に馬のモツならば、還暦過ぎて知識も改まり、ありがたい限りである。
それはともかく、この煮込み。さすがのうまさだ。濃厚そうに見えてその実あっさりしている。しっかり者なのに、ねちっこくはない、練れた人の風格を備えている。店名は大統領だけど、懐手をした大旦那みたいなやさし気な風格があるのだ。
それから、冷しトマト。アタシは好きだ、冷やしトマトが。とくに暑い季節。大量の水を飲んだものか我慢すべきか迷いつつやってきた私にとって、トマトの汁気ほど、うまいものはない。皿の隅に塩を盛って、そこに付けながら食べるのが至福の楽しみだが、血圧にも痛風にもよくない塩分を、過多と言われるくらいがちょうどよいと嘯きながらいただくのである。
うーん……。大統領、さすがだね、最高だね。
そんなことを思っていると、シロの串が2本出てきた。シロは私の好みでタレ焼きを頼んである。ほかにはもちろんタン塩も欠かせないのであるが、大統領のシロモツ、最高だ。表面はしっかり焼きで、噛めばニュルリとうま味が滲みだす。タレのうまさもあるけれど、これはモツのうまさ。ひと口食べたら、七味をふって、味のバリエーションを楽しむことも忘れない。