メモをとるように促す
IT企業勤務の40代男性・Bさんは、「何回でも聞いていいよ」という姿勢について、「確かに理想的」と前置きしたうえで、「現実的には、怠惰な部下が生まれるリスクがあります」と懸念する。
「仕事を覚えてもらうのも管理側の業務。永遠に聞かれたことに答えていたら、こちらの時間も取られるし、相手も育たない。もちろん、わからないことは聞いてもらっていいんですけど、それだといつまでも仕事を任せられないのも事実。『言ったよね?』と言うのは、ある程度危機感をもって仕事をおぼえてほしいという親心です」
ただ、Bさんだって「言ったよね?」と言いたいわけではない。なるべくそのフレーズを言わないために工夫していることがあるという。
「『一度じゃ覚えられないと思うからメモとっていいよ』と促すようにしています。そのうえで同じことを聞いてこられたら『メモとってたと思うよ、見てみたら?』という感じでしょうか。どうしても『言ったよね?』と言いたくなったら、言い方には気をつけます。『教えてなかったらごめん』とか、『言ってなかったかもしれないけど』とか」(Bさん)
何度言ってもわかならいのはその仕事が向いていない
業務に取り組む姿勢で、「言う」「言わない」を判断する人もいる。飲食店を経営する40代男性・Cさんは、「性格や態度によって使い分ける」と語る。
「本人が覚える気があるか、仕事への取組み方次第ですね。はなから覚える気がない人には、『言ったよね?』と言いたくなるし、やる気があって一生懸命さが伝わる人には、何度でも教えたくなります」
Cさんは、「『言ったよね?』と言いたくなったら、自分の教え方も悪かったのかな、と一旦考えるようにしている」という。
「同じように言っても、覚える人と覚えない人がいるので、覚えない人への教え方は模索します。というのも、昔『言ったよね?』を言って、『お前の教え方が悪いんだろ』とキレられたことがあるので……。
ただこれまでの経験上、『言ったよね?』と言いたくなる人は、結局どう教えてもダメなことが多い。教える側の根気強さが求められますが、こっちも仕事がある。何度言っても覚えない人は、もうその仕事が向いていないと諦めて、外す方向にもっていきます」(Cさん)
「言ったよね」という言葉一つに、上司たちはさまざまな葛藤を抱えているようだ。(了)