要は、下の立場の人に気を使う人なのよね
議員事務所でアルバイトをしているけど本業は女性週刊誌の記者だと言うと、「ほう、そうですか」と反応が薄い。そこで、「実は私も乗り鉄なんですよ。真冬に乗る寝台特急『あけぼの』が大好きだったんですけど、廃止になって残念で仕方ありま……」と言い終わらないうちに石破さん、目にみるみる力がこもってきた。「『あけぼの』はいい列車でしたねぇ。しかし、野原さん、あなたはなぜ、ああいうクラシックなブルートレインが好きなんですか?」と、おっしゃったの。
その後は話が弾み、ざっくばらんになって、「政治家はとてもやりがいがある仕事だけど、いつもSPが付く立場になるのは、個人的にはキツイですよ」というようなことをおっしゃったのよね。石破さんの趣味のひとつに「カレーライス作り」というのがあるんだけど、防衛庁副長官のときに議員宿舎でカレーを作り始めたら醤油が切れていることに気がついた。で、任務を終えて帰ったSPを、たかが醤油のために呼び戻したものかどうか──そんな話を面白おかしくお話ししてくれたのを覚えてる。
要は、下の立場の人に気を使う人なのよね。その後、石破さんとは何度か言葉を交わすことがあったけれど、その印象が変わったことはないんだわ。
9月末、自民党総裁の座をかけた高市早苗さんとの決選投票を経て「石破茂君が自民党総裁に当選いたしました」となるまでの経緯を、私は議員会館で聴いていた。石破さんが総裁選に臨んだ5回の挑戦のうち、微力ながら私がお手伝いをしたのは2回だけど、正直言って、決まった瞬間はピンと来なかったんだよね。決定した後、記者会見の場で石破さんの緊張した顔を見て、じわじわと実感が湧いてきた感じ。
でも、本格的に「あぁそうか」と思ったのは、知人の一人ひとりから「石破、最悪。株価暴落。これから不況がやってくるよ。高市なら株価上がったのに」というLINEが届いたときよ。(小泉)進次郎推しの別の政治通からは「国のトップへ駆け上がる若者を古臭い丈の長い背広の集団が押し潰した」という嘆きのメール。どちらも「石破さんだけはイヤ」だったんだって。かと思えば、同じくらい「高市さんだけはイヤ」という人もいて、どちらもケチョンケチョン。総理って、ここまで人に悪く言われるのかと唖然としたわよ。
で、私はというと、政治家ってよほどイヤな人以外、身近にいたら無条件に応援したくなるのが人情だと思う。ましてや同い年で鉄オタだもの。誰がなんと言おうと石破さんが総理大臣になってバンザイ!と叫びたいのでした。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年10月24・31日号