11月5日より東京証券取引所が、株式の取引時間を午後3時半まで延長する。取引時間の変更は70年ぶりだ。この変更にはどのような背景があり、投資家にとってどのような影響があるのか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第113回は、「東証の取引時間延長」について。
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2024年11月5日より東京証券取引所が、取引時間を午後3時半まで延長します。取引時間の変更はなんと70年ぶり。いったいなぜこのタイミングで行うことになったのでしょう? また投資家への影響はあるのでしょうか?
きっかけは大規模システム障害
2020年10月1日に、東証の相場情報の配信システムに障害が発生し、全銘柄の取引が終日停止しました。投資家にとって、売買タイミングは非常に重要です。買いたいとき、売りたいときにシステム停止は、あってはならないこと。そこで、二度とこういったことがないようにシステムを刷新し、そのタイミングに合わせて、以前より要望のあった取引時間の延長を実行する運びとなったようです。
取引時間延長のメリットは?
取引時間は、現状の15時までから30分延長されますが、これによって取引が活発化することが期待されています。もともと東京証券取引所の取引時間は、世界的に短く、それによって外国人投資家を取りこぼしているとも言われていました。外国人投資家による売買が活発だと、株価は上昇しやすいため、日本株投資家にとってもメリットはありそうです。
ラスト5分はリアルタイムでの売買ができない
取引時間延長にともなって、あらたに「クロージングオークション」というしくみが導入されます。これは、取引終了時に行われる板寄せに参加するための注文受付時間を設け、その注文受付の締切と同時に板寄せを行うしくみです。
板寄せというのは、取引市場の売買成立方法の一つで、受付時間内に集まった売り注文と買い注文を一度に突き合わせて、もっとも多く約定(売買取引成立)する値段を決めることです。
15時25分から30分までの5分間を注文受付時間とし、この間は、リアルタイムでの売買はできません。そこで集まった注文を板寄せしてその日の終値が決まります。注文受付時間の5分間の間は、新規の注文や変更、取り消しなどはでき、寄り付き前などと同様、板情報などは配信されます。
最近、終値を基準とする指数に連動するパッシブ運用の増加にともなって、取引終了間際に売買注文が集まりやすくなっているため、クロージングオークションを導入することで、終値形成における透明性の向上を目指します。