効率的で時間短縮ができる家事の「裏技」を求める人は多い。なかでも炊事は献立を考えて材料の調達から、調理、後片付けまでと時間も手間もかかり、悩みの種になりがちだ。そうしたなか、通常の手順を省いたり、電子レンジなどの家電を積極的に利用したりする“ずぼらレシピ”に注目が集まっている。SNSやインターネットサイトで多数紹介され、簡単にできるとして流行ってもいるが、実はそこにはさまざまなリスクが潜んでいる。フリーライターの清水典之氏が、食品の安全性に詳しい科学ジャーナリストに話を聞いた。【シリーズ「“ずぼら料理”に潜むリスク」第1回】
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料理のレシピサイトや動画サイトなどでは、さまざまな“ずぼらレシピ”が公開されていて、大人気になっている。ずぼらレシピは、いかに手を抜くかがアピールポイントになるが、エスカレートすると、食品衛生上、重要なプロセスが抜けたり、物理的に危険な行為をしていたりしかねない。
家電などの工業製品について安全性情報を評価・公表する独立行政法人、製品評価技術基盤機構(NITE)は9月26日、「“ずぼら調理”が招く危険〜トリセツをよく読んで『調理家電の事故』を防ぎましょう〜」と題したプレスリリースを発表。
それによると、2019年から2023年にNITEに通知のあった製品事故情報のうち、調理家電の事故は合計494件。事故原因が判明した226件中、使用者の誤使用や不注意は44%(99件)を占め、最多だった。NITEは時間や手間を惜しむ「ずぼらな気持ち」から調理家電の誤った使用方法をしていると指摘し、注意を促している。
リリースには実際に事故報告のあった事例が写真や動画資料とともに紹介されているが、その内容は衝撃的ですらある。
カップ麺に水を注いで「チン」
例えば、カップ麺の調理。そもそもが「お湯を注ぐだけ」の究極のずぼら料理だが、そこからさらに手抜きして、水を注いでレンジでチンして食べようとした強者がいる。
結果、何が起きたか。アルミコーティングされたフタが燃え上がった。「電子レンジで加熱する際、アルミホイルや金属製の容器を使ってはいけない」ことを知らない人は少ないだろうが、カップ麺のフタにアルミが使われているのは盲点だったようだ。
NITEが報告しているレンチン事故としては、他にも「アルミ包装のソフトクッキーをレンチンして燃え上がった」「アルミのレトルトパウチ食品をレンチンしてスパークした」などがある。いずれもアルミが原因。最近では、電子レンジでの温めができるパッケージのレトルト食品が出ているのでまぎらわしいが、アルミパッケージの商品は絶対にレンチンしてはいけない。