人生後半戦のライフプランを考えるうえで欠かせないのが「家の次に高い買い物」と言われる保険の見直しだ。まだ子育て真っ盛りといった現役世代は民間保険による手厚い保障も必要だろう。だが、年齢を重ねるごとに、不要な特約も増えてくる。何をどう見直すか──その悩みを解消する武器となるのが、「共済」だ。専門家の試算によると、安くてシンプルな共済だけで、老後の保障は十分なケースが多いと判明した。50代会社員のケースをシミュレーションした前編記事に続き、ここでは60代以降のケースを紹介しよう。【前後編の後編】
年金生活が視野に入る60代の場合
働き盛りの50代と年金生活が視野に入る60代では考え方も変わってくる。
60歳で定年退職、再雇用で働くDさん(61)は、定年を機に新たに終身払いの生保(死亡保障200万円)とがん保険(診断給付金100万円、入院保障1万円/日など)に加入した。保険料は月1万7000円。
かつて大手生命保険会社に勤務し、民間保険、共済、不動産、年金、相続とあらゆる老後マネーに精通するFP(ファイナンシャルプランナー)の横川由理氏が解説する。
「日本人男性の平均寿命81歳まで存命なら、この先20年間の保険料は総額約400万円。がんなどで入院・手術しても、高額療養費制度をはじめとする公的補助により自己負担額は一般的に月10万円以内に抑えられます。がん保険は、診断時の給付金などまとまったお金を受け取れるメリットがありますが、罹患しなければ掛け金は1円も戻ってきません」
この場合は、都道府県民共済の「入院保障2型+新がん1型特約」(月3000円=割戻後約1920円)が選択肢に入る。
定年後にアルバイトで暮らす65歳のEさん、年金収入のみのFさんの事例もシミュレーションしたところ、いずれも月3000~3200円の都道府県民共済でカバーできる試算になった。
「都道府県民共済の『熟年型』は65歳からでも新規加入が可能で、月額2000円で70歳までの病気死亡時100万円、入院時2500円/日の保障があります」(同前)
共済への切り替えの注意点
前編記事からここまで6つのケースで共済への切り替えを試算したが、注意点もあると横川氏は続ける。
「あくまで『安くて最小限の保障』で十分なケースであり、万人に共済が向いているわけではありません。手厚い保障が必要な人は、やはり民間保険を検討すべきでしょう」
実際、共済の掛け金の安さを重視するあまり、本来必要な保障が手薄になるケースも少なくない。
今年3月に亡くなった会社員男性(享年47)は、「高校、大学進学を控える2人の子のため少しでも節約を」と、死亡保障1500万円の生保(月5000円)から都道府県民共済の総合保障2型(月2000円)に乗り換えた。
その矢先、脳卒中で倒れ帰らぬ人に。死亡保障は400万円しか下りず、遺族年金と貯蓄もわずかで、残された妻は不安な日々を過ごしている。
一方、自営業男性(65)は今夏、がんの手術を受け、3週間の入院を強いられた。若い時から加入している総合保障型共済で「入院費はほぼカバーできる」と踏んでいたが、65歳以降は入院保障が日額5000円から2500円になると知り悲嘆に暮れた。横川氏が語る。
「お金がかかる子供がいる人は、死亡時の保障だけは充実させるべきです。この会社員男性の場合、保険を解約せず継続するか、共済なら死亡保障が倍の『総合保障4型』(月4000円)など、より手厚いタイプに加入する選択肢もあったはず。
また共済は高齢になると保障内容が変化するため、保障だけでは費用が賄いきれないケースが生じることにも留意すべきでしょう」
現在の保障が本当に必要か、無駄な掛け金を払い続けていないかを精査することから始めたい。
■図解つき全文一気読み:「定年後は保険をやめて共済でいい!」年齢、家族構成、収入別の切り替えシミュレーション “老後保障の達人”FPが指南する保険の見直し術
※週刊ポスト2024年11月1日号