大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

石破茂首相が掲げる成長戦略“最低賃金1500円”が孕む大きな問題点 「地方の衰退を加速させる政策」「中小企業の倒産・廃業が相次ぐ」大前研一氏が警鐘

石破茂首相の政策をどう評価するか(イラスト/井川泰年)

石破茂首相の政策をどう評価するか(イラスト/井川泰年)

 5度目の挑戦で自民党総裁の地位を勝ち取った石破茂氏だが、「何の準備もできていなかった」と断じるのは経営コンサルタントの大前研一氏だ。石破氏について“岸田文雄・前首相以上の経済オンチ”と酷評する大前氏が、その政策の問題点について解説する。

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 石破茂首相がブレまくっている。たとえば、解散・総選挙。自民党総裁選挙の時は国会で野党側と論戦を交わしてから実施すると言っていたが、実際は戦後最短の首相就任から8日後の解散・総選挙に踏み切った。

 選択的夫婦別姓制度についても、総裁選の時は導入に前向きな姿勢を強調していながら所信表明演説では触れず、衆議院本会議の代表質問で「国民各層の意見や国会における議論の動向などを踏まえ、さらなる検討をする必要がある」と手のひらを返して導入に慎重な考えを示した。

 また、総裁選直前までは金融所得課税の強化を主張していたのに、やはり代表質問で豹変し「現時点で具体的に検討することは考えていない」と答弁した。

 さらに、当初は裏金議員を総選挙で「原則公認」とする方針だったが、世論の批判が強く、党内でも異論が相次いだため、旧安倍派幹部ら12人を非公認にした。政治資金収支報告書に不記載が確認された議員は、公認しても比例代表との重複立候補を認めなかった。

 まさに朝令暮改である。総裁選に5回も挑戦しながら、総裁になったら何の準備もできていなかったことが露呈した。石破首相は就任演説で「納得と共感内閣」と述べ、所信表明演説でも「国民の皆様の納得と共感を得られる政治を実践する」と強調したが、実際は「納得も共感もできない迷走政治」の開始にほかならない。

 しかも、経済政策は「新しい資本主義」や「資産運用立国」など岸田文雄政権の主要政策をほぼ踏襲した。副大臣や政務官も多くを再任し、異例の“居抜き人事”となった。これでは何のために首相が交代したのか、さっぱりわからない。岸田首相のままでよかったのではないかということになる。

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