森永卓郎「読んではいけない」

「1ドル=70円台、日経平均は3000円台まで大暴落もあり得る」森永卓郎氏が警鐘を鳴らすトランプ氏再選後の最悪シナリオ

中国からの輸入品の関税を60%に引き上げ公言

 まず為替について、トランプ氏は製造業復活のためのドル安志向を標榜しており、大幅なドル安誘導政策を行なうはずだ。

 当然、その一方で円高が劇的に進む。IMFの世界経済見通しによると、現在の米ドル・円の購買力平価は1ドル=91円なので、短期的にはそれを超えて70円台まで円高が進む可能性がある。

 結果、日本の輸出製造業が大幅な業績不振に陥り、日本経済は円高不況に襲われて大幅なマイナス成長となるだろう。株価も暴落し、日経平均は1万円を割り、最終的に3000円台まで下がる可能性もある。歴史を見ると、バブル崩壊時に株価は8割以上値下がりするからだ。

 トランプ氏の再選で窮地に陥るのは日本経済だけではない。彼は中国からの輸入品の関税を現在の10%程度から60%に一気に引き上げると公言している。それが現実になれば、すでに景気悪化にあえぐ中国経済はさらに痛手を負うことになる。

 中国以外のすべての国からの輸入品に対しても、10%の関税をかけると言っているので、世界経済は混乱を極めるだろう。

 高関税で国内産業を保護するトランプ氏の政策で、確かに米国の製造業は復調し、短期的に米国経済は繁栄することになるはずだ。ただし、好景気が続くのはせいぜい2~3年に限られる。その後に待つのは地獄である。

 米国ファーストの近隣窮乏化政策によって“いじめられ続ける”中国をはじめ、多くの国々の不満が鬱積し、暴発する恐れがあるのだ。

 それで何が起こるか。振り返れば、自国の繁栄だけを目指してわがまま放題をやる大国が現われた時、最終的に世界戦争に結び付くというのが歴史の教訓である。

 米中関係がこれほど緊迫するなか、仮にトランプ新大統領が誕生し、自国優先主義に舵を切ったら……。それは「第三次世界大戦」という地獄の底に向かって思い切りアクセルを踏むことに他ならない。

 トランプ氏の敗戦を願うばかりだが、私につきまとうジンクスが、不吉な未来の到来を予感させてならない。

※週刊ポスト2024年11月8・15日号

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。