中国でのユニクロ不振の「3要素」
そんな中国における事業展開を成長の中核に据えているのが、衣料品の「ユニクロ」や「GU」などを運営するファーストリテイリングだ。グループ全体の売上収益の23.4%、ユニクロ事業の27.9%を占めるグレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)地域の2024年8月期の業績を見ると、上期は好調だったものの、下期は「天候不順と消費意欲の伸び悩み」(決算発表会資料)で減収・大幅減益。通期でも増収減益と苦戦を強いられている。経済ジャーナリストの浦上早苗氏は言う。
「もっとも、ユニクロだけでなく無印良品も、資生堂も決算は悪かった。やはり中国経済がこれまでとは違うものになっているのは確かだと思います」
中国におけるユニクロを取り巻く環境は日々変化を続けている。
「中国では、ここ10数年でショッピングモールがやたらと増えました。たとえば上海では、一つの駅の周囲に4~5か所もあります。ユニクロはそこに積極的に出店してきました。しかし、ショッピングモール同士の競争が激しいためモールごとに勝ち負けが分かれていて、集客力の低下したモールにもユニクロの店舗が150程度あります」(同前)
ユニクロの商品とそっくりで、しかも安価な製品が増えたこともマイナス要因として指摘される。デフレ下の日本では、機能性と安価を売りに既存のアパレル業者から顧客を奪って成長したユニクロだが、中国市場では「日本のおしゃれなアパレルブランド」を前面に押し出しており、逆の立場で顧客を奪われた格好だ。
「中国では、安価な代替品を意味する“平替(ピンティ)”がトレンドになっていて、“ユニクロの商品に似たようなもの”が低価格で続々登場しており、これに売り上げを奪われています。中国のECプラットフォーム『淘宝(タオバオ)』や『ピン多多(ピンドゥドゥ)』で〈ユニクロ(優衣庫)平替〉を検索すると、〈ユニクロと同デザイン〉〈商品タグを切ったユニクロ〉〈ユニクロ差押え品〉と称した“ユニクロもどき”の商品が多数ヒットします。価格は本家より2~5割安価です」(同前)
この2つに加えて「暑すぎるなどの天候不順に、商品構成で対応し切れなかったこと」(浦上氏)も、ユニクロが中国で不振に陥った要因とされ、これら3つの要因は「そう簡単に改善しない」(同前)と推測される。
もっとも、柳井正会長兼社長はどこまでも強気だ。昨年10月には、「ショートタームでは景気後退はあるかもしれない」としながらも、長期的な消費の成長に自信を示し、中国の特殊性を強調するのは欧米流の考え方だとしている。
ファーストリテイリングのグループ上席執行役員で、ユニクログレーターチャイナCEOの潘寧氏も今年7月に、今後3年間は月商の低い店舗を年に50店舗程度閉め、より良い立地で大型店を出店するスクラップ&ビルド(解体と再建)を実施するほか、成長を期待出来る重慶・成都・天津・西安・昆明・鄭州などの都市にグローバル旗艦店・旗艦店を出す等々、撤退とは程遠い出店戦略を打ち出している。
ユニクロは中国市場での成長を維持できるのか、引き続き注目が集まっている。