金価格が現物(ロンドン)、先物(COMEX)とも、10月後半に入り過去最高値を更新、29日現在も高値圏で推移している。過去1年では、現物、先物ともに4割弱ほど上昇しているのだが、にもかかわらず、中国本土、香港・マカオなどで宝飾品の販売を手掛ける香港上場企業の業績は大幅に悪化している。
業界最大手の周大福珠宝だが10月22日、業績に関する公告を発表した。4-9月期(中間)決算は18~22%減収、42~46%減益となる見通しだ。7-9月期(四半期)では中国本土での売上は87.8%を占めたが、この部分は19.4%減収となった。中国本土における金製品に絞り、増収率について過去1年半の推移を振り返ってみると、2023年4-6月期は30.3%増、7-9月期は4.9%増、10-12月期は52.2%増、1-3月期は18.8%増と好調を続けた後、4-6月期は18.0%減、7-9月期は19.3%減と一転して悪化している。
業績悪化の要因として、周大福珠宝のデザインが時代遅れになっているからではないかといった見方がある。さらに、同業他社で今年6月に香港市場に上場した老鋪黄金などは店舗拡大を続けており、業績好調を維持しているようなので、同社の経営に問題があるのではないか、といった分析もある。とはいえ、大手の一角で同社のライバル企業である六福集団も7-9月期の中国本土における既存店売上高は29%減であった。
不動産不況による影響もあって、高級宝飾品需要が低迷している。そうした中で、金に対する長期の投資需要、短期の投機需要が足元で大きく落ち込んだ可能性が高い。
中国政府による需要はどうだろうか。
中国の外貨準備における金(ゴールド)の保有量について、9月末は7280万トロイオンスで、前月末と同じであった。2022年11月から2024年4月にかけて、18か月連続で合計1016万トロイオンスを買い増したが、5月以降は5か月連続で買い増しが見送られている。国家による需要も足元では消えている状況だ。