キャリア
費用面が魅力、マレーシアへの海外留学

マレーシア留学で「自分に負荷をかけたい」高校生たち 国内の大学進学と同程度の費用で「オールイングリッシュ」の授業を受けられるがドロップアウト組も

生活でのハードルは「大量の虫とトイレ」

 一方で、日本人からすると戸惑うこともある。

「とにかく虫は多いですね。最初、1階に住んでいた時はゴキブリが大量に発生していました。10階に引っ越したら減りましたね。それとイスラム教の国の習慣で、用を足した後はホースの水で股間を洗い流します。だからトイレの床がびちょびちょに濡れていることも多いですよ」(林さん)

 林さんは虫やトイレ事情にすぐに慣れたというが、それになかなか慣れない人もいるだろう。もうひとつ、メリットでもあり、デメリットでもあるのが、勉強が本当に厳しいという点だ。

 マレーシアは大学が3年制で、留学生の多くはまず、ファウンデーションコースという準備コースに入学し、1年間学んでから大学に進学をする。

 ファウンデーションコースへの入学のハードルは高くなく、英検2級ほど英語力があれば入れるが、一方で、学部に入るには英検準1級ほどの英語力が必要となり、しっかりと授業を理解するためには英検1級ほどの力が必要となる。そのため、授業についていって卒業するのは、かなりの努力を強いられるだろう。そのため、途中でドロップアウトする日本人留学生も出てくる。

授業をしっかり理解するためには英検1級レベルが必要

 もちろん、その生活や学習の厳しさを覚悟して学生たちは留学を決めていく。

「マレーシアへの留学をする学生たちは将来のキャリアを見据えていますね」(マレーシア留学サポートセンター・斉藤高志代表取締役)

 林さんにしろ、10月に都内で行われたマレーシアの大学の合同説明会に来ていた高校生たちにしろ、「4年間、全力で勉強をして英語や専門性を身につけ、就職やその後のキャリアを切り開くんだ」という強い意志を感じた。

 今どきの日本人の高校生は就職のことを考えず、自分の心地のよさや、やりたいこと優先して大学を選ぶが、マレーシア留学を志す高校生はその真逆にいる印象だ。

日本の受験戦争で勝てなくても、マレーシアの大学で自分に負荷をかけて勉強をすれば、その後のキャリアは開けてくる。

 今、日本の大学生は国立大学志向が高まっている。地方の高校生からすれば都内の私立大学に進学をするのは、親元を離れることや費用の面でハードルが高く、それよりは地元の国立大学に進学をしたいと考える。地方の国立入学のハードルが下がっているから東京の大学への進学者は減っている。

 そんな中で、高校生が「地元から飛び出して自分の可能性を広げるんだ!」という希望を持った場合、東京の大学だけではなく、マレーシアの大学も選択肢に入ってくる。大学同士の学生確保の競争もグローバル化しているわけである。

(前編から読む)

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。【Xアカウント】@sugiyu170

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