歯周病が糖尿病を悪化させることがわかっている。それを防ぐには、食後の歯磨き、定期的な歯周病検査と歯垢除去に加え、ストレスを減らして禁煙で免疫低下を防ぐことなどが大切だ──。シリーズ「名医が教える生活習慣病対策」、日本大学松戸で歯周病治療学講座を受け持つ小方頼昌教授に話を聞いた。【糖尿病を悪化させる歯周病・後編。前編から読む】
一度下がった歯肉を元の位置に戻すのは難しい
歯周病は、歯周病原菌に感染しプラークを形成していることに加え、環境因子(ストレス、タバコ、食生活、睡眠など)と身体の状態(免疫力、体質など)の3つが作用して発症・進行していきます。歯周病原菌に感染しても免疫力が高く、環境因子が良好であれば発症しないか、発症しても治療で改善することもあります。
歯周炎であるかどうかは、ポケットの深さが4mmを超えるかで診断します。ポケットの検査はプローブという先端が細く目盛りが付いた金属の器具を用います。プローブの検査は歯1本に対して6か所、歯をすべて検査するには168か所以上の計測が必要です。
しかし、歯肉が腫れていてポケットが深くなっていたり、計測中の出血によって正しく深さが測れないこともあります。いかにして正確にポケットの深さを測ることができるかがその後の治療に関わってくるので、プローブによる歯周病検査は日本歯周病学会の認定医か歯周病専門医に実施してもらうのが安心でしょう。
プローブ検査に加えて、レントゲンで歯の周囲の骨があるかどうかを確認します。仮に骨が吸収されて少なくなっている場合は、手術による治療も選択できます。歯と歯肉の境界を切開し、そこに細胞成長因子を留置すると半年程度で骨の再生が見られます。ただし、骨の再生は可能ですが、一度下がってしまった歯肉を元の位置に戻すことは難しいのが現状です。