田代尚機のチャイナ・リサーチ

「明らかな無効票が有効になるの?」中国で注目されるアメリカ大統領選挙の問題点 富裕層の献金額の多さにくわえ、投票制度の不備も指摘される

ミシガン州の大学で行われた期日前投票の様子(Getty Images)

ミシガン州の大学で行われた期日前投票の様子(Getty Images)

 しかし、投票後、自分のウソがばれ学業に影響があることを恐れ、自ら現地の選挙管理事務所に出向き、投票を撤回する方法があるかどうか尋ねたことで事件が発覚した。

 ミシガン州では詐欺罪、偽証罪に対する刑罰は重く、最悪の場合、前者で懲役15年、後者で懲役4年、罰金2000ドルが課せられる可能性があるようだ。

 興味深いのは、ミシガン州の選挙法によって彼の投票は有効であるという点だ。現行制度では、投票における匿名性の確保が何よりも重視される。投票しなかった側からの制裁、暴力などから有権者を守る趣旨なのだろうが、一旦投票されてしまえば、誰が書いた投票用紙、投票権(機械の場合)であるのか、一切わからないようになっている。だから、この学生が行った投票について客観的な証拠を以てそれを見つけることはできない。つまり、一旦投票してしまえばいかなる理由でもそれを無効にできない。

不正投票を防ぐことはできないのか

 誰が見ても明らかに無効である投票がいとも簡単に行われてしまい、しかも、一旦投票されてしまえば取り消すことができないばかりか、その正当性を追求することもできない。これでは、もし選挙管理を担当する側に悪意があれば、選挙権のない違法移民を買収して投票させたり、本人確認を故意に行わないことで偽名による多重投票を許したり、既に死亡した人の身分で投票させたりすることすらできてしまう。

 ワシントン州バンクーバーとオレゴン州ポートランドで発生した投票箱が焼かれた事件、ペンシルバニア州ランカスターで発生した2500枚に及ぶ投票への干渉、不正投票事件、投票機が故障し、トランプ氏のボタンを押したのにそれがハリス氏に切り替わった事件などが報じられている。また、バイデン大統領がトランプ支持者をゴミ呼ばわりしたり、トランプ氏が大量の不正投票が行われたとする声明を発表し、支持者に対して積極的に不正投票を報告するように呼び掛けたりしているとする報道もある。

 日本では先日、衆議院選挙が実施されたところだ。裏金議員に対する風当たりは強く、自民党は大きく議席数を減らした。企業、団体献金の全面的な禁止や、金まみれの政治を生み出す温床となっている政党助成金の廃止、さらには選挙制度の抜本的な見直しなど、政治改革を叫ぶ声は大きい。とはいえ、米国民主主義の現状をみる限り、どれも難易度は極めて高そうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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