判断の難しいグレーゾーン
インサイダーに当たるかどうかの判断が難かしいグレーゾーンというのもあります。たとえば、噂や一般的な市場情報に基づく取引や、重要かどうか判断がむずかしい情報に基づく取引です。ただし、レストランやタクシーで偶然聞いてしまった上場企業の未公開情報をもとに、株取引を行なった場合は、インサイダー取引に当たります。
こういった判断は、なかなか難しいものです。判断に迷った場合は、その情報が公表されるまでは取引を控えるのが賢明です。また、自社の内部規定や取引ルールをあらためて確認しておくこともおすすめします。
インサイダー取引の罰則
インサイダー取引は、市場の公平性を損なう行為として、厳しく規制されています。違反した場合、5年以下の懲役や500万円以下の罰金などの刑事罰、さらには課徴金の対象となる可能性があります。
また、インサイダー取引によって得た利益は当然没収されますが、損失が出た場合でも、罰則を受けます。さらには、社会的な信用も失うことになりますので、その後の人生に与えるダメージは想像以上に大きなものになります。今回、インサイダー取引の疑いで報道されている金融庁に出向中の裁判官は、業務で知ったTOBの情報をもとに、自分の名義で株の売買を行いました。この違反行為によって、相当な努力して得たであろう裁判官という地位を失う可能性があり、今後、法曹界で職につくのは、極めて困難になるでしょう。
インサイダー取引は、リスクとリターンを比べると、リスクのほうが圧倒的に大きく割に合わない行為です(もちろん犯罪行為です)。この事件を機に、あらためて認識したいところです。
今回のまとめ
・偶然聞いてしまった上場企業の未公開情報であってもそれをもとに株取引を行うことはインサイダー取引にあたる
・インサイダーにあたるかどうか迷う場合は、取引を行わないこと
【プロフィール】
藤川里絵(ふじかわ・りえ)/個人投資家・株式投資講師・CFPファイナンシャルプランナー。2010年より株式投資をはじめ、主に四季報を使った投資方法で、5年で自己資金を10倍に増やす。普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため活動し、DMMオンラインサロン「藤川里絵の楽しい投資生活」を主宰。本稿の関連動画がYouTubeにて公開中。