藤川里絵「さあ、投資を始めよう!」

投資家が知っておくべき「インサイダー取引」の要件 「偶然聞いてしまった」でもNG、損失が出てても罰則 判断に迷う場合は取引を控えるのが賢明

金融庁職員と東京証券取引所社員に、相次いでインサイダー取引の疑いが発覚した(写真:イメージマート)

金融庁職員と東京証券取引所社員に、相次いでインサイダー取引の疑いが発覚した(写真:イメージマート)

 金融庁に出向中の裁判官と東京証券取引所の社員のインサイダー取引が相次いで発覚した。インサイダー取引とは一体どのようなものなのか。どのようなケースが該当し、気をつけるべき点はどこか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第116回は、「インサイダー取引」について。

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 金融庁に出向中の裁判官と、東京証券取引所の社員のインサイダー取引が、立て続けに報道され、株式市場はざわつきました。加藤勝信・金融担当大臣が「あってはならないことであり大変遺憾」とコメントを出したことも、事の重大さを表しています。各ニュース番組でも、日本取引所グループの最高責任者である山道裕己氏が、陳謝している映像が流されました。

 インサイダー取引は、けっして他人事ではありません。株式投資を行っていれば、そうとも知らずやってしまう可能性もあります。

インサイダー取引とは?

 インサイダー取引とは、会社の内部者や関係者が、未公開の重要な情報(インサイダー情報)を利用して、その会社の株式などを売買する行為です。重要な情報というのは、TOB(株式公開買い付け)、合併、M&A、自社株買いなどなど、株価に影響を与えるであろう情報すべてが当てはまります。よいニュースだけでなく、発表前に業績の大幅悪化の情報を知って、株式を売ることもインサイダー取引に当たります。

 規制対象者は、その企業の役員、従業員、取引先企業の関係者、職務上重要情報を知り得る立場の人、さらには、それらの人から情報を受け取った人もなり得ます。たとえば、自社が取引先上場企業に買収されることを知った社員が、その上場企業の株を買収発表前に買うなどもインサイダー取引となります。また、未公表の好業績情報を役員が友人に伝え、その友人が株を購入するのもインサイダー取引に当てはまります。

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