不相応なチャレンジをさせたあげく落ち込んだ母親
関西で中学受験をしたことのあるデザイナー・Hさん(30代/男性)は、「全落ちして母親がすごく塞ぎ込んだ」と、自分自身よりも親がショックを受けていたことを明かす。
「僕の母親はいわゆる教育ママで、とにかく“教育にいい”と聞けばなんでも取り入れる詰め込み教育タイプでした。塾にも通わされましたが、僕の成績は正直真ん中よりちょっと上ぐらい。それなのに分不相応な超進学校とそこそこの進学校など合計3校受験させられ、当然不合格。僕は『やっぱりな』という気持ちでしたが、母はワンチャンあると思っていたようで、僕よりも落ち込んでいました」
地元の効率中学へ進学したHさん。落ち込んでいた親の姿が目に焼き付いてしまい、自身にも異変が起きた。
「テストの度に受験のことを思い出すようになり、『点が悪かったら親がまた落ち込む』と過剰に緊張するようになってしまいました。そのせいか、普段の勉強は頑張れても、試験で点が取れない。
高校受験も第一志望の学校に落ちました。僕としては勉強で競うのは向いてないことを自覚し、その後はデザイン系の道にいく決断ができたので、いい経験になったと思っていますが、母は『子育てを間違えた』『何が悪かったのか』『負担を強いていたのか』など、今も時々思い出しては愚痴をつぶやいています。期待を裏切ってしまったのは申し訳ないなとは思います」(Hさん)
消えないコンプレックス
都内の大手メーカーで働くOさん(20代/男性)も中学受験に失敗した一人。今のOさんの周囲には中高一貫出身者が多く、隣の青い芝の話に興味が尽きない。
「僕の出身は日東駒専ですが、運よく大企業に入り込めました。そこで出会ったいわゆる高学歴の人たちは、中高一貫校卒の方が多いんです。なぜ中高一貫卒かわかるかといえば、高学歴の人がいるとつい僕の方から、『高校私立ですか?』とか聞いちゃうんですよね。僕も中学でどこかに受かっていたら、もう少し上の大学に行けたのかなとか、ついつい考えてしまいます」
Oさんは、「僕が知り得なかった世界に行くことができた人たちは、その後の人生のルートも変わっていることを感じる」という。そしてコンプレックスが消えることもないという。
「純粋に興味津々でどんな勉強環境だったのかなどを聞いてしまうのですが、僕が中学受験事情に詳しいのが分かると、『あれ? Oって私立だったっけ?』と聞かれることがあって、それは切ないですね(笑)。彼らには『公立の方が共学だしいいじゃん』と言われることもありますが、僕のコンプレックスが消えることはありません。結局はないものねだりですね」(Oさん)