イジりが嫌でついてしまった手抜きグセ
中国地方で育ったKさん(20代/男性)が感じたのは、勉強ができる子へのあだ名による“圧力”だ。Kさんは、「あのとき斜に構えていなければ……」と後悔の念を抱いているという。
「僕は漢字が好きで、小学校低学年くらいだと『難しい漢字が書けて凄い!』と言われていましたが、学年が上がって漢検に挑戦するようになると、あだ名が『カンケン』になりました。リスペクトというよりはイジられているようで、気分はよくなかったですね。
中学校に上がり、成績優秀者を教科別で上から10人張り出すようになると、変なあだ名を付けられるのが嫌で、成績が30番台程度をキープするように手抜き勉強をしていました。常にトップの成績だった同級生が丸いメガネをかけていたのですが、社会の教科書に載っていた日本兵に似ているという理由で、裏で『兵隊』と呼ばれていたのも、あまり気持ちのいいものではありませんでした。
中学を卒業する頃には手を抜くことを覚えてしまい、勉強に本気を出すことができなくなりました。高校は一応市内の進学校へ入学しましたが、そこで一気に成績がガタ落ち。
『昔はできた』という過去の栄光にすがって大学受験に向き合いましたが、真面目に努力を積み重ねていた人たちに到底かなうはずもなく、第一志望のK大学には落ちて、近畿地方の私立大に進学することになりました。イジられようが気にしなければよかった……というのは負け犬の遠吠えにしかなりませんが」(Kさん)
勉強ができたことで、理不尽な思いをした人たちは、案外身の回りに少なくないのかもしれない。(了)