中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「そんなに悪いもんじゃない」今ではすっかり減った“社員旅行の思い出”を振り返る 熱海へ、鬼怒川へ、グアムへ…若き日の珍道中

「チケットは?」「パスポートがない!」グアム旅行でてんやわんや

 続いての旅行はこの「グループ」のY先輩が異動することになり、その送別旅行をなんとグアムですることになった! Y先輩が「3泊4日3万9800円」という激安パック旅行をネットで見つけてきたのです。メンバーは同じグループメンバーと、PR会社から出向してきていた女性スタッフと、経理系の仕事をする「デスク」の女性スタッフでした。

 この旅行に行く前におかしなこともありました。この激安パック旅行販売の窓口となっていたEを名乗る女性とY先輩が連絡を取れなくなります。いくらメールを送ろうが電話をかけても返事がない。Y先輩はEさんの住む家をネット検索を駆使して突き止め、埼玉まで行き、Eさんを捕まえた! 「とにかく飛行機のチケットとホテルの予約確認票をください」とやったらEさんは「すいません!」と謝り、どこかへ電話をし、その数時間後に人数分のチケットなどをY先輩に渡したのでした。

 どうにも不可解な展開でしたが、Eさんは別に旅行代理店社員というわけではなく、不倫相手の男性が旅行会社勤務で、余った航空券やホテルの部屋を激安で売って小遣い稼ぎをしていたのでは……、などと話したものです。この旅行にはもう一つトホホな話があり、リーダーの次に年上のE先輩が、自宅にあるはずのパスポートを発見できず。結局一人だけ日本に残ることになってしまったのです。そして、オチとしては旅行代理店的なEさんとE先輩はまったく同じ苗字だった。リーダーは「今回はEに振り回されたな」と笑っていました。

 グアムではショッピングセンターへ行ったりホテルの目の前のビーチで泳いだりして過ごします。そして、3泊目、新年度の4月1日になる瞬間はホテルの部屋に全員で集まり、カウントダウン。かくしてY先輩は無事異動となったのでした。

 そして最後の社員旅行の経験は、私が退職するときです。グアムメンバーに加え、さらに増えた出向者と、新たにやってきた部長加わって、2泊3日で鬼怒川温泉へ。私自身は自ら進んで退社を決めたものの、この素晴らしい仲間達と過ごす最後の時間ということで、寂しさが次第に増していきました。

 皆は会社に残るけどオレは一人ぼっちになってしまうのか……。あぁ、やっぱ会社を辞めるという判断は拙速だったか……、なんてことを考えながら帰りの電車では最後の宴会をし、これにて私は会社を辞めたのでした。

 なんだかしんみりとした思い出は多いものの、一緒に社員旅行へ行ったメンバーとは今でも時々会っています。私は社員旅行、好きです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。

【写真3枚】社員旅行を楽しむ若かりし日の筆者

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。