ドナルド・トランプ氏の米大統領への返り咲きが決まり、世界の次の関心はその経済政策に移っている。今後の展望について、1期目のトランプ氏と気脈を通じた安倍晋三・首相(当時)を官邸スタッフとして支えた元財務官僚の高橋洋一氏(嘉悦大学教授)が、インタビューに答えた。
――トランプ勝利を受け、円安ドル高、米国株の大幅高など次期政権の政策を考慮に入れた「トランプ・トレード」の動きが注目されている。
「特に為替については、これからしばらく円安ドル高に動くでしょうが、こうした取引が一巡すると、円高ドル安に転じると見ています。ドル高(円安)が先行するのは、『すべての輸入品に関税をかける』というトランプ氏の公約が先に意識されるから。
アメリカ国内のインフレ率は低下傾向にありますが、輸入関税導入による物価高への影響が意識されると、インフレを再び加速させる可能性がある。足元のインフレ率の低下の流れを相殺するような形になって、ドル高(円安)を誘うのです。
ただ、この流れはあくまで一時的で、すぐに円高ドル安に転換する。というのも、『アメリカ・ファースト』を掲げるトランプ氏は国内産業の国際競争力を高め、輸出を増やすドル安政策を志向しています。政権が始動すれば、ドル高(円安)を抑え込もうとあらゆる手を打ってくるでしょう。
自国通貨安を志向する金融政策は、『近隣窮乏化政策』とも呼ばれています。通常、ドル安ならばアメリカの輸出は増加する一方、相手国となる日本は逆に国際競争力が低下して輸出が減少し、悪影響が出るリスクがある」