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《もっとマズいところがたくさんある》施設介護大手の「訪問看護」診療報酬過剰請求疑惑は氷山の一角か、急増する「ホスピス型住宅」で何が起きているのか

急増する「ホスピス型住宅」の現場で何が起こっているのか(イメージ)

急増する「ホスピス型住宅」の現場で何が起こっているのか(イメージ)

 難病や末期がんの人の介護、看護、そして看取りを担う施設として広がる“ホスピス型住宅”の問題が注目を集めている。東証プライム上場の施設介護大手で診療報酬の“過剰請求”の疑いが報じられ、市場は敏感に反応した。だが、取材を進めると、問題は特定企業の施設に留まらないこと、現実と制度の“ミスマッチ”があることも浮かび上がってきた。ジャーナリストの末並俊司氏がレポートする。

数分で安否確認を終えた場合も「30分訪問した」と記録

〈全国にある当社のPDハウス40施設を対象として徹底した調査を実施していることから、調査の完了までに相応の日数を要する〉──。

 11月6日、全国14都道府県で介護施設「PDハウス」を運営する東証プライム上場の施設介護大手・サンウェルズ(本社・金沢市)は、2025年3月期中間決算発表の延期を発表。社外専門家による特別調査委員会の業務実態調査に時間を要することが理由と説明した。

 2006年創業の同社は〈介護サービスに進化と変化を〉と掲げ、パーキンソン病に特化した施設「PDハウス」を2018年から展開。パーキンソン病は国の指定難病で、脳内の神経細胞が徐々に失われて体が動かなくなっていく進行性の疾患だ。患者数は約28.9万人(厚生労働省「令和2年患者調査」)。高齢化とともに、この20年で2倍超に増えた。

 そうしたなか、PDハウスは「神経内科専門医による訪問診療」「パーキンソン病に特化したリハビリ」「24時間体制の訪問看護」を打ち出し、施設数を増やしてきた。同社は2022年に東証グロース市場に上場し、今年7月にはプライム市場に市場区分を変更。順調に業績を伸ばしてきた。

 しかし、9月にPDハウスの訪問看護で診療報酬の過剰請求の疑いが報じられる。同社は特別調査委員会を設置したものの、その調査を完了することが中間決算発表に間に合わないとしたのが冒頭のリリースだ。翌7日の株価は前日終値から約20%急落。市場での大きな注目を集める。

 PDハウスでは入居者のケアを併設された訪問看護の事業所が担う。専門医が各患者の状態に応じて指示を出し、必要なケアを提供する仕組みだ。

 それに関して共同通信が〈難病向け老人ホームで不正か 訪問看護、過剰請求指摘も〉(9月2日付)と題する記事を報じた。記事では、訪問看護の回数や訪問する職員数は患者の状態に応じて判断されるべきところ、〈「1日3回」「複数人での訪問」を「必須で入力」となっており、「全社的に過剰な訪問看護で報酬を請求している」との指摘が内部から出ている〉とある。看護師が夜間に数分で安否確認を終えた場合も、「30分訪問した」と記録しているとの証言も報道された。

 国指定の難病や末期がんなどの場合、訪問看護の診療報酬の算定では、「1日3回」の訪問までが請求可能で、1回の訪問時間は30分以上と定められている。複数人での訪問による加算もある。必要ない人にまで「1回30分」「1日3回」「複数人の訪問」をして、診療報酬を過剰請求した疑いが報じられたわけだ。報道とそれを受けての調査について、サンウェルズはこう回答した。

「当社としましては、一日でも早く特別調査委員会による調査が完了するよう、全面的に協力してまいりたいと考えており、問題が確認された場合は業務体制の改善等に誠心誠意努めてまいります」

 実態解明には特別調査委員会の結論を待つ必要があるが、取材を進めると、この問題が特定の企業だけのものではない現実も浮かび上がってきた。

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