フリーライターのTさん(40代/男性)は毎年手書きで数百通の年賀状を送っており、この冬も続ける予定だ。
「長年仕事を続けてきて、仕事が仕事を呼ぶ好循環に恵まれていますが、すごくお世話になった人でも、タイミングや巡り合わせでどうしても疎遠になってしまうことはある。それでも“私は貴方のことを忘れていません”ということを伝えるため、手書きで年賀状を送るのはマナーであり、フリーランスとして生きていくための手段だと信じています」
とはいえ数百枚も送る人にとって1枚22円の値上げはなかなか痛い。それでもTさんは、年賀状を止める気はないという。
「郵便料金値上げは年賀状を止めるには絶好のタイミングですが、1万円程度の出費増は必要経費と考えます。それよりも値上げのタイミングで年賀状を止めて、生活が苦しいと思われる方が遥かにイヤ」
「送る人が減っているからこそ差別化できる」
パートのKさん(50代/女性)は、自分が出すのはもちろん、小学生の子供たちにも「どんどん出しなさい」と言っているという。
「メールなどで新年の挨拶を貰うより年賀状を貰う方が圧倒的に嬉しいですし、自分も出したい。周りの子供の親に聞くと、『送ってきた人にだけ返す』というシステムの家も多いみたいですが、“ウチはそうじゃない”というプライドというか見栄みたいものはあります」
年賀状離れをむしろチャンスと捉える人もいる。中小IT企業の営業マンのSさん(40代/男性)は、取引先に自腹で年賀状を送る予定だ。
「私が勤める会社は2年前、デジタル化を理由に企業宛ての年賀状廃止を宣言。ホームページにもその旨が記されていますが、営業部の人間としては、取引先との商談で足元を見られたら終わりです。デジタル化といっても本当は経費削減なのはバレバレですから。
年賀状を送る人が減っているからこそ、送る重みは増していますし、こちらが自腹で送っていることは先方も知っているはずなので、誠意が伝わるのではないかと。個性を出したいので、年賀はがきでなく切手を貼って出しています。差別化につながると思っています」
これまで長く続いてきた年賀状文化。数が減ればありがたみがアップするという理屈も一理あるように思えるが、はたして今後はどうなるのか。