安全性を高める対策と努力
このため鉄道では、安全を確保する対策を行なうだけでなく、事故やトラブルの原因になり得る小さな芽を摘みとる努力が行われています。なぜならば、鉄道では、現場で働く人の小さなミスや、現場を支える機器の小さな故障が原因となり、大きな事故が起きてしまうことがあるからです。
実際に行われている安全対策の例を、働く人と機械に分けて説明します。
鉄道現場で働く人は、安全を確保するための特別な教育や訓練を受けており、ミスの発生率を最小限に抑える努力を日々重ねています。
しかし、そのような人であっても「人間」なので、たとえ注意していても、意図しないミスをしてしまうことがあります。このことで生じるミスや事故を「ヒューマンエラー」と呼びます。
このため、鉄道現場で働く人は「基本動作」にしたがって動き、「ヒューマンエラー」の発生を防いでいます。「基本動作」とは、あらかじめ定めた動作や手順で、作業を安全に、確認を確実に行うことを目的としています。
「基本動作」の代表例には、「指差喚呼(しさかんこ)」があります。これは、対象を指で差し、その名前や状態を声に出して確認する動作で、「指差呼称(しさこしょう)」とも呼ばれます。みなさんのなかには、運転士や車掌、駅員が「指差喚呼」をやっているのを見たことがある人もいるでしょう。
現在は、「指差喚呼」が、鉄道などの運輸業だけでなく、製造業や建設業など、危険がともなう業種の現場で使われています。
また、鉄道では、現場で働く人が万が一「ヒューマンエラー」を起こしても、安全を確保できるようにバックアップする機械が導入されています。
その代表例には、日本でATS(自動列車停止装置)と呼ばれる機械があります。これは、列車の安全を確保する運転保安システムの一種です。列車が、停止信号を示す地上信号機(線路に設けられた信号機)に接近したときに、警報ベルを鳴らして運転士に知らせる、もしくは自動的に列車を地上信号機の手前で停車させる役割があります。
いっぽう、鉄道を支える機械でも、安全対策が施されています。
たとえば、鉄道で使われている機械の多くは、その異常が事故につながるのを防ぐために、「フェールセーフ」という手法に基づいて設計されています。「フェールセーフ」とは、機械で故障や誤作動が発生しても、安全な状態を保つようにシステムを構築する手法です。