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ビジネス

米国の「対中半導体封じ込め策」が中国のイノベーションを加速させる皮肉 6年前からの対中強攻策もすでに効果は逓減

米国商務省の輸出管理措置の効果はどれほどか(NurPhoto via AFP)

米国商務省の輸出管理措置の効果はどれほどか(NurPhoto via AFP)

 米国商務省は12月2日、対中半導体輸出管理措置を発表、半導体製造装置、メモリ、設計関連メーカーを中心に140社を、エンティティリスト(輸出規制の対象となる企業リスト)に加えると発表した。2022年10月には最先端半導体やその製造装置について中国への輸出を事実上禁止しており、その後日本やオランダにも同調するよう要求した。これらの措置によって中国企業は、半導体サプライチェーン全体で細部にわたり、米国の制裁を受けることになった。

 今回のエンティティリスト入りによる影響について、対象となる中国本土上場企業は次々と公告を出している。たとえば、エッチングなどの半導体製造装置メーカーの北方華創科技は「エンティティリストに加えられたことによる同社の業務への実質的な影響はない」と記しており、IC回路設計などを手掛ける華大九天は「エンティティリスト入りの影響はコントロール可能だ。全フローでEDA(Electric Design Automation)ツールの国産化を加速させている」などと発表している。

 本土市場関係者たちは「一部の非上場企業で影響は大きいとするところはあるが、産業全体を通してみれば、コントロールできる範囲であり、長期的には国産化の動きを加速させるといった効果が期待できる」といった見方をしているようだ。

 米国商務省は2018年4月、通信機器大手の一角を占める中興通訊(ZTE)に対して、競争力を保つために欠かせない米国製造技術について輸出を禁止する措置を発表した。2019年5月には華為技術(ファーウェイ)もその対象となった。その後、エンティティリストを使った輸出管理の形で、監視カメラメーカー、軍事関連企業などが次々と輸出制限を受けるようになった。

 米国の対中強硬策は6年以上前から始まっており、中国ハイテク企業の危機感は当時から強い。加えて政府は半導体産業を戦略的新興産業の一つと位置付け、2000年には税制優遇を開始、2006年には本格的に国家主導の研究開発プロジェクトを立ち上げ、2014年には中央、地方、国有機関が出資する形で半導体産業投資ファンドを設立するなど、強力な支援策を展開している。

 半導体メーカーは危機に備え、早めの設備更新投資を繰り返しており、どこも設備能力に十分な余裕ができている。これまで手薄であった製造装置メーカーの育成も現在は強力に進められている。

 中国にとって厳しい政策は今回の措置ではなく、米国最先端半導体・装置の輸出規制の方だ。高密度配線技術ではTSMCが最先端技術を有しているが、TSMCから最先端HBM(High Bandwidth Memory)を購入できなくなれば厳しい。AIの性能は深層学習のレベルで大きな差が付くが、深層学習を高速に大量に行わせるためにはできる限り高性能なGPUを使った方が有利であり、それを作るには最先端HBMが必要だ。また、HBMの性能によって大きな差がつく高性能コンピューティングの開発でも遅れを取ってしまう。

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